吉本興業で芸人をしています。元国税職員さんきゅう倉田です。
東京大学経済学部金融学科に所属して、芸人なのに金融を必死に勉強しています。
経済学部生は3年になるとゼミに所属することができます。ぼくは金融系のゼミに所属し、難解な本を読んで内容を共有する「輪読」と最近気になったニュースの紹介を行います。
東大の経済学部生にとって、このゼミの存在は大変重要で、人間関係が希薄である学部において、唯一のコミュニティになります。昨日は懇親会があって、失恋したばかりのぼくの話を聞いてもらいました。そう失恋しました。
▶東大生の恋愛相談
大学に入って恋愛の重要性に気づく、勉強漬けだった東大生たち
東大にはクラス制度があって、入学してすぐに上のクラスが下のクラスの世話をする。例えば、文-27組の人は、次の年に入学した文-27組の人たちを旅行に連れて行ったり、オリエンテーションをしたり、履修の相談に乗ったりする。
そうやって知り合いになると、キャンパス内で軽く挨拶をするような後輩もいて、LINEを交換し、様々な話を聞くことがある。
先日は恋愛相談をされた。
「倉田さんお久しぶりです。1年間東大で勉強してきて、自分にとって最も重要なことは何か考えたんです。そして、それが結婚だと気づきました。倉田さんがなぜ結婚できないのか、お教えくださりませんか」
丁寧さの中に込められた言葉の暴力性。一周回って可愛い。会って相談に乗ることにした。後日、本郷の喫茶店に着くなり、彼は言った。
「ぼくは倉田さんみたいになりたくないんです」
なんと答えるべきか迷った。「君は何て失礼なやつなんだ!よそでそんなこと言うなよ」と注意しても意味がない。彼のこのような発言は今後も続くだろうし、ぼくが不快に思っていると誤解されるかもしれない。
君はぼくみたいにはなれないよ。そう伝えた。
「君はぼくみたいにはなれないよ。ぼくは芸人で、成人男性の平均くらいには女性と食事に出かけてきた。40歳になって結婚していないけれど、別にずっと女性と縁がなかったわけではないんだ。でも、君はこのままだと童貞のまま40歳になるだろう。君とぼくは違うよ」
うんともすんとも言わないので、彼がどのように感じたのか分からない。ぼくと彼との違いを理解したのか、それともやっぱり「倉田さんにはなりたくない」と思い続けているのか。
▶ぼくが結婚できない理由は
どうしてさんきゅう倉田は結婚できないのか
しばらくオレンジジュースを啜っていると、彼が口をひらいた。
「結婚できない理由を教えてくださりませんか」
ぼくが結婚できない理由に再現性はなく、彼に役立つとは思えない。しかし、疑問に思うなら答えてやりたい。答えてやりたいが答えられない。なぜならば、理由が分かっていたらさっさと結婚しているからだ。自分でも分からないのだ。
そもそも恋人がいないのだから結婚できない。ではどうして恋人ができないのか。それには様々な理由があるが、彼にとっては不要な情報だろう。彼とぼくとでは生きる世界が違うのだ。
「一番大事なものは結婚だと思ったんです」
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