年齢を重ねるにつれて、今までとは違う胸の張りや痛みに戸惑うことはありませんか?
日本の女性は、一般的に50歳前後で閉経を迎えるといわれてきましたが、昨今の研究では平均52歳とされています。
閉経の前後5年間は更年期と定義され、ホルモンバランスの変化により、心やからだにさまざまな変化が起こることがあります。
そのなかでも「胸の張りや痛み」は、多くの女性が抱える悩みのひとつ。
今回は、更年期女性の胸の違和感の対策法について「あんしん漢方」の薬剤師、清水みゆきさんに教えてもらいました。
50代、突然の胸の張りと痛み

イラスト/lely
2人の子どもを育てながらフルタイムで働く奈津美さん(50歳)は、最近なんだか胸の張りや痛みが続くと悩んでいます。
「生理前でもないのに胸が重たく感じたり、ジーンと痛くなったりするんです。生理は来たり来なかったりで、もうすぐ閉経だと思っているのに……」
ブラをつけるのもつらいという奈津美さん。
「下着が合っていないのかもと思って、スポーツブラに変えてみましたが、効果はありませんでした」
調べれば調べるほど不安に…
職場でも胸の違和感は続き、ふとした拍子に胸を押えて呻いてしまう奈津美さん。
「大丈夫ですか?なんだかとても疲れてるようですよ」
隣の席の後輩が、心配そうに声をかけてきました。
「実は、最近なんだか胸が張って痛くて……生理じゃないんだけど、なんか変なのよね」
奈津美さんは力なくそう答えます。
「えっ、それって乳腺症とかじゃないですよね? うちの姉が前にそんな感じで……なにかあったら怖いし、病院に行った方がいいですよ」
後輩の言葉が頭から離れなくなった奈津美さん。
帰宅後、家事を終えてソファに座ると、すぐにスマホを手にとり、「胸 張り 生理じゃない」「胸 痛み 50代」など気になるワードを検索していきました。
すると出てくるのは、「乳がん」 「高プロラクチン血症」 「乳腺繊維腫」など見てるだけで不安になるワードの嵐。
「まさか私、病気なんじゃ……そういえば最近、微熱っぽい日もあったし……」
次第に、不安が胸の中で広がっていきました。
40~50代の胸の張り…原因は?

Photo:O-DAN
40代を過ぎると、胸の張りや痛みを感じる女性が増えてきます。
具体的な原因について詳しく解説します。
1.更年期のホルモンバランスの変化
更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少するため、乳腺にも影響して、胸の張りや痛みが生じやすくなります。
このホルモンバランスの乱れは自律神経にも関わり、胸の違和感とともにさまざまな心身の不調を引き起こすことがあります。
この不調は、月経周期とは関係ないことが特徴的です。
2.疾患との鑑別も必要
更年期症状のひとつとして見過ごされがちな胸の張りや痛みですが、病気が隠れていることもあります。
とくに注意したいのが以下のような疾患です。
・乳腺症:女性ホルモンの乱れによって起こる良性の乳房疾患で、張りや痛み、しこりなどの症状。
・乳がん:胸のしこりや痛みに加えて、乳頭から分泌物がでることも。無症状でも超音波やマンモグラフィなどの検診で発見されることもあります。
・高プロラクチン血症:乳腺の発達や母乳分泌を促すホルモン(プロラクチン)が過剰になることで起こり、乳汁の分泌や無月経などがみられます。
これらの症状は自己判断が難しいため、気になる変化がある場合は、乳腺外科や婦人科での検査を受けるようにしましょう。
本編では、50代女性に起こりやすい胸の張りや痛みの原因、病気との見分け方についてお伝えしました。
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