吉原遊女のキョーレツな「営業テクニック」! 客をつなぎとめるためなら「爪を剥いで贈る」くらいは平気でやった!? | NewsCafe

吉原遊女のキョーレツな「営業テクニック」! 客をつなぎとめるためなら「爪を剥いで贈る」くらいは平気でやった!?

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吉原遊女のキョーレツな「営業テクニック」! 客をつなぎとめるためなら「爪を剥いで贈る」くらいは平気でやった!?

*TOP画像/瀬川(小芝風香) 鳥山検校(市原隼人) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」10話(3月9日放送)より(C)NHK

 

「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は江戸時代における「遊女の色恋営業」について見ていきましょう。

店の売上に貢献している遊女ほど優遇される

吉原の遊女は人気商売。遊女は客の心をあの手この手でつかみました。自分のところに客が集まれば収入が増え、生活が安定しますし、妓楼での居心地もよくなります。

現代でも色恋営業では「〇〇さんが好きです。本当に惚れちゃったわ」は決まり文句ですが、遊女の「惚れんした」は吉原における常套句でした。また、遊女は「年季が明けたら結婚しとうございます」とそんな気がなくとも客に言うこともありました。今でいうところ結婚詐欺のような手法ですが、吉原では珍しくない光景でした。客は半ばウソだと思いつつもわずかな期待を抱き、”課金”したよう……。

遊女たちは体だけではなく、心までも客に売ることが求められていました。遊郭で色を売る若い女性たちは身も心も蝕まれていったのです。

自分の身体を傷つけてでも客が欲しい

遊女は客をその気にさせるため息を吐くようにウソをついていただけでなく、体を張っていました。遊女は客の心をつかむために次のことをしていたそうです。

・客に自分の髪を切らせる

髪は女の命。遊女は髪を客に切らせることで、客に本気度をアピールしていた。惚れている遊女の髪をバサバサ切るような粋ではない客は少なかった。ほとんどの客は遊女の髪を気持ち程度に切っていた。

・自分の爪を客に贈る

自ら爪を剥ぎ、その爪を客に贈った。

・指切り

切り落とした小指を客に贈った(おもちゃの小指や死体の小指が使われることもあった)。好きな女から小指をもらって困惑する男は少なくなかったようで、指を少し掠(かす)め切る方法に変わった。

・起請文(きしょうもん)

起請文とは人が契約を交わす際、記載内容を破らないと神仏に誓う文書。遊女は「年季が明けたら結婚する」と書き、血判を押した。私文章であるため法的拘束力はない。

これらは遊女が使う色恋営業術としてよく知られるものでした。客は“オレを店に来させるためだな” “オレの好きな〇〇ちゃんは本気なのか?”と思うこともあったでしょう。しかし、人間だれしも”自分は他の客とは違う” “自分は特別” “ほかの遊女は△△でも、オレの好きな〇〇ちゃんに限ってはないだろう”と根拠のない自信を抱くものです。男たちは遊女の体を張ったウソにまんまと騙され、あるいは多少の疑いを抱きつつも貢いでいました。

本命でもウソでも「二の腕に入れ墨」くらいは入れるのが吉原流

『べらぼう』の第9話では、うつせみ(小野花梨)の腕に「長サマ命」という文字が入っていました。作中では説明がなかったため、うつせみが客の気を惹くために自ら入れたのか、それとも客に無理強いされたのかは分かりません。

うつせみ(小野花梨) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」9話(3月2日放送)より(C)NHK

史実において、吉原の遊女の間では「〇〇サマ 命」と二の腕に入れ墨をする慣習がありました。遊女は“仕事”で男性客の相手をしているわけですが、客と両想いになることもあります。遊女は年季が明けるまでは恋しき人と一緒になることは許されず、男女の営みを不特定多数と繰り返さなければなりません。しかし、身体は売っても心は売らないことの証として、本命の男性の名前を二の腕に入れていたのです。

しかし、この方法は客の心を惹き付けるために悪用されることもありました。金ヅル(=客)に対して心から惚れているフリをするために、その人の名前を腕に彫る遊女もいたようです。

遊女は腕に名前を入れた客と別れたら、入れ墨を艾(もぐさ)で焼いて消したといわれています。入れるのも消すのも痛い……。

いつまでも足を洗えない。働いても働いても借金が残るからくりは

いつの時代においても「美」をウリにする職業はお金がかかります。現代においてもキャバ嬢やホステスは仕事をするための支出が多いと聞きます。化粧品やステキなドレスを毎月のように購入し、美容院に頻繁に通わなければならないため、自由に使えるお金は収入のわりには多くはないんだとか。

吉原で働く遊女も同様でした。着物、ヘアメイク、個室の調度品などの代金は自分持ち。売れっ子になれば収入は増えるものの、身に着けるものも豪奢になる……。また、花魁はお世話をしてくれる少女(=遊女の見習い)に着物などの品物の代金を払ってあげなければなりませんでした。

こうした費用を捻出できない場合、遊女は妓楼にお金を借ります。借金が当初よりも膨らんだ遊女も珍しくありませんでした。妓楼を出ることは借金がある限り年季が明けても許されません。

本編では、吉原における遊女の、客をつなぎとめるさまざまな方法についてお伝えしました。

続いての▶▶「好きでもない男に色を売り続ける女郎に救いはあるのか? そして、ついに吉原大門の外へ出た花魁の将来は

では、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)第10話を深堀りします。

参考資料

井川香四郎『寅右衛門どの 江戸日記 殿様推参』文藝春秋 2018年

小林恭二『心中への招待状』文藝春秋 2005年

永井義男『蔦屋重三郎の生涯と吉原遊廓』宝島社  2024年

堀口茉純『吉原はスゴイ: 江戸文化を育んだ魅惑の遊郭』 PHP研究所 2018年

歴史の謎を探る会『学校ではあつかえないウラ日本史 まじめな生徒さんには刺激が強すぎる(禁)教科書』河出書房新社 2005年


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