モラハラ、夫婦問題カウンセラーの麻野祐香です。
モラハラで辛い経験をされた方々のお話を伺う中で、「経済的な理由で離婚できない」「仕事が絡んでいるから逃げられない」といった状況に苦しんでいる方も多くいらっしゃいます。特に、夫が経営者であり、妻が事務などを担っているケースでは、単なる夫婦関係の問題にとどまらず、仕事の責任も絡み合い、より複雑な事情を抱えることになります。モラハラの方が経営者の場合は、仕事場ではパワハラもしていることが多いと思います。
今回ご相談いただいたDさんも、そんな状況の中で悩まれていました。
パワハラ気質の夫の代わりに、会社を内部で支える妻
Dさんの夫は会社を経営しています。表向きは誠実で人当たりの良い経営者ですが、感情的に従業員を怒鳴りつけ、社内ではパワハラ社長だと言われていました。
夫は社員といえど信用することはなく、経理事務の女性社員に通帳やネットバンキングなどお金関係を触られるのを嫌がりました。その穴埋めは、妻であるDさんがすることに。通帳や入出金などお金に関することはDさんの立ち会いのもと行っていました。
そんな夫のパワハラが原因で、女性の社員は数ヶ月でみんなやめてしまうのだといいます。そのたびにまた人を募集し、一から仕事を教える日々…。負担が大きすぎると感じはDさんは、自分がすべての事務をやる事にしました。
夫とは家でも会社でもずっと一緒。オンオフがつかないので、心はいつも休まらずもう限界でした。何度も辞めたいと願い、夫からも離れたいと思いつつも「私がいなくなったら会社はどうなるの?」という責任感から、「自分がやるしかない」「私がいなければ会社が回らない」と苦しみながら仕事を続けていました。
モラハラ気質の人間が経営者である場合、職場でパワハラを行う可能性が高い
モラハラをする人が経営者である場合、職場でパワハラを行う可能性が高いと感じることがあります。その背景には、モラハラとパワハラの共通点があるからです。どちらも相手の尊厳を踏みにじり、精神的に追い詰める行為です。
モラハラはじわじわと精神的に追い込むことを目的とし、パワハラは権力を背景にして相手を威圧する点に違いがあります。 その理由を以下に説明します。
モラハラを行う人は、相手を心理的に支配しようとします。経営者という立場になることで、会社内での「権力」を持ちやすくなり、それを利用して部下や従業員をコントロールしようとする傾向があります。(支配欲)
モラハラを行う経営者がいると、その影響は職場全体にも広がります。経営者のモラハラ的な態度が日常化することで、会社全体の雰囲気が悪化し、それが職場の文化として根付いてしまうことも少なくありません。結果として、パワハラが当たり前のように行われる環境ができあがってしまう危険性があります。
また、経営者という立場は常に経営や業績のプレッシャーを抱えており、そのストレスが積み重なると、周囲にイライラをぶつけるようになります。感情的に怒鳴ったり、理不尽な要求を押し付けたりすることで、パワハラが生まれるのです。特にモラハラ気質の強い経営者の場合、自分の感情をコントロールできず、部下や従業員を威圧的に支配しようとする傾向が顕著です。
このように、モラハラ夫が経営者である場合、家庭だけでなく職場においてもパワハラを行うリスクが非常に高いと言えるでしょう。
会社があるから離婚はできない?モラハラが経済的な束縛に変わるとき
さらに問題なのは、Dさんが「会社があるから離婚できない」と思い込んでいたことです。
夫が経営者でありその収入で家族が生活をしているので、Dさんが仕事を辞めれば会社が回らなくなり、家族や従業員の生活まで影響してしまう。その責任感が、彼女の足かせになっていました。Dさんはこう語ってくれました。
「私は何度も、全てを捨てて出ていきたいと思いました。でも私がいなくなることで、夫の会社の経営がうまくいかなくなれば、子供達の学費や生活にまで影響が及ぶ事になる。自分が我慢すればなんの問題も起きずに、会社は存続でき、従業員にも迷惑をかけないんだ、そう思って私は自分が我慢することを選んだのです。」
モラハラを受ける妻が別れられない理由のひとつに、この「責任感」や「罪悪感」があります。夫の支配によって、妻は「私がいなければ家族が壊れる」「私がいなくなれば、会社も回らなくなる」と思い込まされているのです。
本編では、モラハラ気質の夫が経営する会社で人柱となっているDさんのお話をお届けしました。
続いての▶▶「『オレに迷惑をかけるな!』と家でも説教する夫。ストレスがたたり、ある日私は倒れてしまって」
では、Dさんが家で受けているモラハラの実態についてお伝えします。