25~44歳女性の就業率は上昇し続け、約8割が働く女性という現代。それに合わせて、女性の生涯未婚率も増加の一途を辿っています。 結婚をしたいけれど出会いがない、成婚に至らないということはなぜ起きるのか、働く女性は婚活にどのような悩みを抱えているのでしょうか。
アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラーの伊藤友美さんのもとには、さまざまな悩みを抱える婚活女性が訪れます。
今回は、「年収2,000万円以上」を条件にする35歳女性のエピソードを紹介します。
※プライバシーを考慮して、事実関係の一部を変更しております。
【働く女性の婚活百景 #28】 前編
就職氷河期世代のふんわり契約社員が婚活をスタート
F香さんは35歳。いわゆる就職氷河期時代に大学を卒業し、契約社員としてこれまでに数社を経て、現在は飲料メーカーに勤務しています。
F香さんはふんわりした雰囲気のかわいらしい女性で、大手企業に定年まで勤めていた父と専業主婦の母のもとで何不自由なく育ちました。「いつか結婚するんだろうな」と漠然とは思っていたものの、「わざわざ婚活をする気にはなれませんでした」とおっとりと話すF香さん。20代の頃は何人かの男性と交際したこともありましたが、どの相手とも結婚を考えるまでには至りませんでした。
気づいたら30歳を過ぎ、男性と出会う機会が少なくなってきたことを実感したF香さん。友人に勧められたアプリに登録して婚活をスタートします。ところが、「いい出会いがない」と悩んで、相談に来てくれました。
年収1,200万円の部長でも「生活が苦しい」ということは…
話を聞いてみると、「出会いがない」最大の理由は、F香さんが掲げている相手への「条件」でした。その筆頭が「年収2,000万円以上の会社員」というもの。
結婚相手に条件を設けること自体に問題はありません。私は婚活をするときは「理想の人リスト」を作ることを推奨していますし、年齢や年収などはできるだけ具体的な数字を入れるほうがイメージしやすいのも事実です。
ですが、その前に「現実を知る」ことも必要です。私はF香さんに「なぜ年収2,000万円以上を望むのか」を確認しました。その理由は、「同じ職場の50代の部長が、『生活が苦しい』といつもぼやいているから」。部長の年収は推定1,200万円。それでも毎日妻に持たされたお弁当を食べて節約し、「自分がほしいものは何も買えない」とこぼしています。部長を見ていて、「余裕のある生活をするなら、年収2,000万円は必要かも…」とF香さんは思ったのだそうです。
「結婚しても、生活水準は下げたくないんです」というフレーズは、F香さんに限らず婚活女性からよく聞きます。契約社員とはいえ、実家暮らしのF香さんには自分の自由になるお金がかなりあります。1年に1回は海外旅行をしますし、年に数回は友達と国内旅行にも出かけるそうです。誕生日には「一生もの」のジュエリーやバッグを吟味して、少しずつ揃えているとも話していました。
「結婚しても、年に1回くらいは海外旅行をしたい」
「記念日はドレスコードのあるレストランへ連れていってほしい」
と結婚生活への夢を語る一方で、「私は契約社員だから、いつまで仕事ができるかわからないし、子どもができたら仕事はしたくない」というF香さん。私に言わせれば、あまりにも世間知らずです。
年収2,000万円以上の給与所得者は全体の2.1%
国税庁の調査(令和4年分)では、男性の平均給与は563万円。給与所得者のうち、年収2,000万円以上の人は全体の2.1%しかいません。さらに独身の男性となれば、もっと割合は少なくなります。ちなみに年収2,000万円の人の平均年齢は53.5歳。これが「現実」です。
F香さんの年齢の条件は「25歳~39歳」なので、F香さんの条件を満たす男性はかなりの少数派。そう伝えると、「外資系企業に勤めている人や経営者なら、30代でもそれくらいは普通だって聞きました」とニコニコしています。外資系企業は、日本とは雇用形態がかなり異なります。多くは年棒制で、いつ契約を切られるかわからないシビアな世界です。10年先の保証などないという意味では、経営者も同じです。