「太りにくいカラダになりた~い!」ただ食物繊維をとるだけじゃダメなの!?「腸内細菌のリレー」を意識して、効率的に腸活!(前編) | NewsCafe

「太りにくいカラダになりた~い!」ただ食物繊維をとるだけじゃダメなの!?「腸内細菌のリレー」を意識して、効率的に腸活!(前編)

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「太りにくいカラダになりた~い!」ただ食物繊維をとるだけじゃダメなの!?「腸内細菌のリレー」を意識して、効率的に腸活!(前編)

何かと話題の「腸活」。健やかな毎日を送りたいけど、実際にはどうしたらいいのか分からないという人も多いのでは。効率よく腸活をするには、食物繊維の摂取量を増やすと共に知っておきたいことがあります。大阪公立大学の細見晃司先生にお話を聞きました。

腸活するなら知っておきたい3つの「〇〇ティクス」

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腸活にはプロバイオティクス、プレバイオティクス、ポストバイオティクス、3つのキーワードを押さえておきましょう。

代表的な腸活の一つがプロバイオティクスを摂取することです。プロバイオティクスは、乳酸菌やビフィズス菌など、発酵食品に含まれる体にとって有用な菌のことで、納豆や味噌、醤油、酢、酒粕、チーズ、アンチョビ、ヨーグルトなどに含まれています。腸内の善玉菌を増やす役割もしています。

二つ目は腸内細菌が好むエサ、プレバイオティクスを摂ることです。プレバイオティクスは果物や野菜、キノコや海藻、大麦などに含まれていて、食物繊維やオリゴ糖、難消化性でんぷんなど、大腸内のビフィズス菌などの栄養源になります。

腸に有用菌を届けるプロバイオティクスと腸内で有用菌を育てるプレバイオティクス、両方同時に摂って相乗効果を狙うことをシンバイオティクスと言います。

三つ目が「ポストバイオティクス」と呼ばれるものですが、これは体にいい食材や食品成分から、酢酸菌や酪酸菌などの腸内細菌が作りだす「代謝物」のことで、その中で体にいいものをポストバイオティクスと呼んでいます。

ポストバイオティクスの中には、今、最も注目されている「短鎖脂肪酸」があり、短鎖脂肪酸は酢酸やプロビオン酸、酪酸のことを総称しています。

腸内細菌のエサ、食物繊維

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●短鎖脂肪酸はどうして作られる?

短鎖脂肪酸は腸内細菌によって作られるのですが、腸内細菌は小腸から大腸まで広く分布しています。小腸に1兆個、大腸に100兆個いると考えられていて、大腸には小腸の100倍以上の菌がいます。腸の面積から考えても、大腸に相当な密度でたくさんいることが分かります。

短鎖脂肪酸を作るには、大腸にいる100兆個の腸内細菌にエサとなるものを届ける必要があります。食べ物を食べた時、胃や小腸で消化、分解されず、大腸まで届く栄養素は食物繊維やオリゴ糖など、難消化性の食べ物です。

パンやご飯などの炭水化物や砂糖、タンパク質や脂質は、胃や小腸の消化酵素、唾液のアミラーゼでどんどん分解されて糖になって小腸から吸収されますが、食物繊維やオリゴ糖は消化酵素の影響を受けないため胃や小腸では吸収されず、大腸まで届き、菌のエサとなります。

ひと昔前まで、食物繊維は食べ物のカス、いらないものだと言われていました。消化酵素で分解されないため、大腸まで届いて腸内細菌のエサになり、分解、代謝されるのです。今や、食物繊維は腸活には欠かせないものとなっています。

●食物繊維はどれくらい摂ればいい?

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日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、減少傾向にあります。最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり14g前後と推定されています。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、一日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。

日本人の食事摂取基準は5年ごとに見直されるため、厚生労働省の有識者検討会は、エネルギーと栄養素の摂取基準を示した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の策定に向けた報告書をまとめました。この報告書では、食物繊維はさまざまな生活習慣病のリスクの低下に寄与すると提言し、成人で少なくとも1日当たり25gの摂取を推奨しています。

食物繊維を手軽にとりたい方へお勧めするのは、主食の穀類からとる方法です。一日のうち1食の主食を玄米ごはん、麦ごはん、胚芽米ごはん、全粒小麦パンなどに置き換えると、効率的に食物繊維が摂取できます。

また、食物繊維は、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類などにも多く含まれています。食品で見ると、そば、ライ麦パン、しらたき、さつまいも、切り干し大根、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、糸引き納豆、いんげん豆、あずき、おから、しいたけ、ひじきなどは、1食あたり摂取する量の中に食物繊維が2~3gも含まれています。効率的に食物繊維をとるには、これらの食材を毎日の食事の中に上手に取り入れると良いでしょう。

※厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネットより引用

>>食物繊維をとってもすぐに短鎖脂肪酸が作られるわけではない⁉

腸内細菌のリレーで作られる短鎖脂肪酸

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食物繊維を摂取したら、すぐさま短鎖脂肪酸が作られるのかというと、そうではありません。いくつかの腸内細菌のリレーが行われた結果、短鎖脂肪酸が作られます。

まず、大腸には食物繊維やオリゴ糖を分解する糖化菌がいて、食物繊維を糖にします。その糖を乳酸菌やビフィズス菌などがエサにして、乳酸や酢酸を作ります。この時、大腸に乳酸菌やビフィズス菌がいないと糖が体の中に溜まってしまいます。

代謝の結果、乳酸や酢酸を作ることができたら、いよいよ最終走者の出番です。大腸の中にいるプロビオン酸菌や酪酸菌などが、乳酸や酢酸を代謝して短鎖脂肪酸を作ります。

腸内細菌にもそれぞれ役割があり、この代謝のリレーが滞りなく進むことで最終産物の短鎖脂肪酸ができるのです。そのためにはいろんな種類の腸内細菌が必要で、腸内細菌叢は、人間の社会と同じく、ダイバーシティ、多様性に富んでいるのがいい状態だと言えます。

 

「短鎖脂肪酸」には様々な効果が期待できるのですが、口から食品として摂取しやすいのが酢酸、「酢」です。酢には、体を太りにくくする効果も含めて様々な機能があります。毎日15mlの食酢を飲んだ人は内臓脂肪が減少し、体重や腹囲、BMIや血中の中性脂肪が減少したという報告があります。また、血圧が高めの人が食酢を摂取することで、血圧を下げることができたという論文も発表されています。

酢は、酢の物を食べる、飲料として飲むなど口から摂取することもできますが、腸内で酢酸を作ることも可能です。

プロビオン酸と酪酸は、酢のように食品には含まれていない成分で、菌が作り出すユニークな物質です。食品として摂取できたらいいのですが、あまりにも悪臭が強くて、酪酸は便の匂いがします。そのため口から摂取するにはハードルが高く、お腹の中で菌に作ってもらわなければなりません。

短鎖脂肪酸の2つの役割

●短鎖脂肪酸で便秘を改善

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短鎖脂肪酸の大きな働きの一つは、「腸のエネルギー源」になっているということです。

大腸で作られた短鎖脂肪酸は腸の細胞に吸収されて、腸が動くための栄養源やエネルギー源になって蠕動(ぜんどう)運動を促します。腸は勝手に動くわけではなく、動くためにはエネルギーを必要としています。

私たちが食べたものは小腸で吸収され、その栄養は血液に乗って全身に届けられます。しかし、短鎖脂肪酸の原料となる食物繊維やオリゴ糖は小腸では消化吸収されず、大腸まで届いて腸内細菌によって代謝され、短鎖脂肪酸になります。その結果、腸管のエネルギー源として活用されるのです。

エネルギー源である短鎖脂肪酸が枯渇してくると、大腸の動きが鈍くなり、便通が悪くなる、便秘になってしまいます。便秘になるとお腹の中にガスが溜まって、不快感やストレスを感じてしまいます。腸が元気で活発に動くために短鎖脂肪酸は欠かせないものなのです。

●太りにくい体質になるには

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腸では、脳など腸以外の体の組織と同じようにホルモンが作られます。腸管ホルモンというもので、血糖値を下げる役割をしています。

腸管ホルモンは短鎖脂肪酸の刺激や働きによって産生が促進されるのですが、血糖値が下がるので太りにくくなると考えられています。

また、腸管を動かすにはたくさんのエネルギーが必要なのですが、短鎖脂肪酸は、そのエネルギー源となるためカロリーを消費することができます。

腸管がエネルギーを得るための経路もいくつかあり、糖質や炭水化物を使った経路、脂質を使った経路、脂肪酸を分解してエネルギーを生み出す「ベータ酸化」という経路があります。ベータ酸化には脂肪を燃やすだけでなく、代謝を促進したり、腸管ホルモンの産生を促したりする働きもあり、その結果、太りにくい体質になるのです。

前編では、短鎖脂肪酸で太りにくい体を作る方法や短鎖脂肪酸の役割についてお伝えしましたが、後編では、短鎖脂肪酸を作るための食事法に加え、腸活で美肌になる方法や更年期の人の腸活についてお話しします。

▶つづきの【後編】を読む▶食物繊維や発酵性食物繊維には、相性があるってホント? よくやりがちな「〇〇食べ」をしている人も要注意。どんな食べ方かというと……。 ___▶▶▶▶▶

プロフィール

細見晃司先生

2011年大阪府立大学生命環境科学部卒業、2015年に同大学院にて博士号(獣医学を専攻)を取得。2015年より国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所にて特任研究員として腸内細菌に関する研究をスタート。同研究所の主任研究員、日本学術振興会特別研究員PD、ドイツ留学などを経て、現職の大阪公立大学大学院獣医学研究科・准教授。


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