加害者の子どもをいかにサポートするか | NewsCafe

加害者の子どもをいかにサポートするか

社会 コラム
人権週間の12月10日、犯罪や交通事故の加害者家族を支援するNPO法人ワールド・オープン・ハート(WOH、阿部恭子代表、宮城県仙台市)が都内でシンポジウムを開きました。犯罪被害者に関しては基本法が制定されて、不十分ながらの様々な施策がなされていますが、加害者家族に特化した施策はありません。シンポジウムでは、この日、とくに加害者の子どもの問題を考えました。

犯罪被害者に関しては1980年、犯罪被害者等給付金制度ができ、99年には刑事手続への関与や損害の回復に関する見直しが行われました。2004年には、これまでの施策を含めて、相談や情報提供の整備を含めた基本法が成立しました。犯罪被害者は、特に救済すべき対象となっています。

交通事故の被害者に関しては、国の「第9次交通安全基本計画」で「被害者支援の推進」をうたい、交通事故被害者サポート事業が行われ、内閣府が統括しています。自助グループの運営や相談窓口があり、交通事故で家族を亡くした子どもの支援に関することもあります。

しかし、犯罪でも交通事故でも加害者の家族への支援で特化したものはありません。加害者家族への非難や差別がなされることがあります。場合によっては、自殺に至ります。

2008年の秋葉原通り魔殺傷事件の死刑囚の弟は15年2月、自殺しました。週刊現代の記者に寄せた手記では、〈被害者家族と加害者家族の苦しさはまったく違う種類のものであり、どっちのほうが苦しい、と比べることはできないと、僕は思うのです〉と書いています。また、2014年に起きた長崎県佐世保市で起きた女子高生殺害事件での、加害少女の父親が自殺しています。

自殺については、2006年、自殺対策基本法ができました。その後、自殺対策大綱ができ、計画の裏付けとなる予算が配分されるなど、対策がとられてきています。とはいえ、加害者家族に特化した支援や支援団体はほとんどありませんでした。

そんな中で、阿部さんはWOHを設立。弁護士やソーシャルワーカーらのスタッフとともに加害者家族支援の活動を続けています。この問題にはなかなか社会が注目しません。もちろん、被害者が先という声もあるでしょう。しかし、質は違いますが、加害者の家族も苦しいのです。

この日のシンポジウムでは、特に加害者の子どもをテーマに話し合われました。家族の犯罪に書き込まれた子どもはその後、どのようにケアがなされているのかは、なかなかメディアを通じて私たちのところに情報としては流れません。もちろん、流れないことはプライバシーが守られているからですが、それ以上に、「加害者の子どもへのケア」「加害者の子どもの人権」が、社会問題として共有されてないからでしょう。

この日、報告があったケースでは、家族の犯罪を手伝わされ、児童養護施設に入所後に強迫症状が出ていた子どもがいました。しかし、精神科医は「自然なこと」として、十分なケアがなされなかったといいます。また、親が刑務所に入った理由を「覚えてない」という子どもがいたが、虐待された子どもの中には親を理想化する場合があるが、それと似たような心理が紹介されました。

どんな理由があっても、必要な子どもには社会的養護が提供されるべきです。虐待だろうが、犯罪者の子どもだろうが、同じように、ケアすべき子どもです。そのためには、社会的養護を必要とする背景に偏見を持ってないことは大切です。また、虐待された子どもと、加害者の子どもとでは、社会的な偏見が違う可能性があります。加害の内容によっては、偏見に晒され続けます。そうしたことを理解したサポートが必要になるのではないでしょうか。
[執筆者:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》
page top