昔ほど恋愛が流行らなくなった大きな原因のひとつに「IT技術の進歩」があります。
というのも、恋愛の原動力は「さみしさ」であり「人恋しさ」です。太古の昔から人は夜ひとりになると人恋しくなり「つまらないなあ、さみしいなあ、誰かと話したいなあ」と思って、手紙を書いたり電話をしたりメールを送ったりしたわけです。さみしさを抱えて悶々とする気持ちから、(よくも悪くも)恋は生まれてきました。
ところが現代ではどうでしょう? SNSの普及によりいま人がさみしさを痛感できる機会は、ほとんどなくなりました。
たとえば以前は妙齢のおとながひとりで夕飯を食べていると「さみしそう」という目で見られたものですが、いまはたいてい、スマホを見ながらご飯を食べています。
ネットのニュースをチェックするなら、まだしもさみしさの影がありましたが、SNSであればその雰囲気はゼロ。いわば、ひとりでご飯を食べていると見せかけて、スマホの先にいる友人と一緒にご飯を食べているわけです。
料理の写真をアップしながら「○○で担々麺食べてるよ」と書き込もうものなら、「いいなあ!」「えー、誘ってよ~」「また、今度ね」「今度久しぶりに会いたいね」「あ、その店、おれも行ったことある、おいしいよね」「いいね!」「私なんて、夕飯まだだよ~」などと、楽しく会話しながら食事することができます。
「アサヒ Slat(すらっと)」のCMでも、中山美穂とDAIGOが画面を通じてお酒を飲みながら話していますが、そういったシーンが描かれることも珍しくなくなりました。
いつでもゆるくつながっていればそこそこさみしくない。かえって「そろそろ帰って欲しいなあ」とか「セックスしなくちゃいけないかな」といった煩わしさもありません。これでは、恋愛という極めてアナログでオールドタイプな孤独の埋め方の、出る幕はありません。
もちろんスカイプのおかげで遠距離恋愛が続いたり、Facebookのおかげで昔好きだった人と連絡が取れたりとプラスの影響もありますが、どちらかというと「さみしさ」を奪ったことのほうが大きな影響でしょう。
この流れは止められるものではありませんし、個人的にはそれほど悪いことだとも思いません。人間の恋愛作法が、もの狂おしいものから落ち着いたものへ変化していく歴史的過程とも言えるでしょう。
ともあれ、往年の名曲「Video Killed the Radio Star」(邦題:ラジオ・スターの悲劇/バグルス)ではありませんが、これからますます「Information Technology Killed Love」な世の中になっていくのは、間違いのないところです。
[ライター 五百田達成/「恋と仕事のキャリアカフェ」主宰、オトナ女子の恋愛・結婚・仕事の悩み相談を受ける恋愛カウンセラー。TBSバラエティ番組「私の何がイケないの?」にも出演。また、7月14日(土)に人気企画「女子会ランチ in恵比寿」を開催(http://ameblo.jp/iota-s/entry-11281695970.html)。詳細はオフィシャルブログ(http://ameblo.jp/iota-s/)まで]
[photo by:Brian "DoctaBu" Moore]
《NewsCafeコラム》
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