タイガー、バック | NewsCafe

タイガー、バック

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「アーノルド・パーマー招待」最終日、タイガー・ウッズが2位に5打差でフィニッシュ。PGAツアーでの復活優勝を遂げた。

09年9月のBMW選手権以来実に924日ぶり、2年6か月になる。2009年不倫が発覚。その後セックススキャンダルが続きツアーを欠場。また長年痛めていた左膝の手術を行ったが、完全な状態には戻らなかった。不世出の名選手と言われたが、心と身体のダメージから立ち直るには時間がかかった。
優勝の瞬間、派手なガッツポーズはなく、しみじみ優勝をかみ締める大人の姿が見られた。

「本当にタフな一日。消耗戦だった。これまで取り組んできたことがようやく形になった。とにかくうれしい」

2位に1打差でスタートした最終日。追うマクダウエルは10年の全米オープンチャンピオン。この日は強風が吹き、さらにピンポジションが難しく、多くの選手がスコアーを落とした。北アイルランド出身のマクダウエルは当然風には強い。試合はタイガーとの一騎打ちの様相になった。2番でボギーとスコアーを落としたが、その後は前半で4バーディ。バック10のところでは3ストローク差。マクダウエルを離した。しかしこの日のコンディションは厳しい。
タイガーがボギーで、マクダウエルがバーデイを奪えば、1打差になる。油断ができない状況が続く。15番パー4。タイガーは3オン。マクダウエルはピン1mのバーディチャンス。タイガーのパーパットの距離は4m。ここが大きな山場になった。このところのタイガーはショットは復調しているが、ここぞと言うときのパットを決めきれず、優勝できないケースが多かった。このホールでは慎重にラインを読み、構えると4mを打った。そしてボールはカップに吸い込まれた。このパット時の表情、目の輝きは勝負強いタイガーに戻っていた。マクダウエルは結局このホール、チャンスを決めきれず、優勝は遠のいた。

ゴルフは一度優勝から遠ざかると、なかなか優勝できない。ニクラウスも、ワトソンも、ノーマンもみんな苦しんだ。タイガーは左ひざの故障をもち、さらに不倫騒動、セックス依存症など社会的なバッシングやスポンサーが離れと言う経済的なダメージを受けた。心もプライドも自らが招いたトラブルで大きく傷ついた。

そして2年半の歳月で、その傷を乗り越えることができたと言える。2位になったマクダウエルだが、タイガーとは因縁がある。かっては50位以下の選手だったが、09年タイガーは不倫騒動で出場予定の「シェブロン・ワールドチャレンジ」を欠場。その時に、補欠として繰上げ出場になったのがマクダウエル。さらにこの大会で2位。その結果で翌年の全米オープンの資格を得て、優勝となった。勝負には温情はないが、マクダウエルはささやかなお返しができたことになる。

いよいよ来週木曜日から2012マスターズが始まる。15度目のメジャー優勝を目指すタイガーにとっては、絶好のタイミングでの復活になった。今季ミケルソンはすでに優勝、2位と好調。さらに若手のローリー・マキロイ、昨季アメリカ・ヨーロッパ双方の賞金王の偉業を成し遂げたルーク・ドナルドなど若手の台頭も激しい。
その中で、タイガーはどのようなプレイを見せるか。ツアー優勝はあと1つでニクラウスに並ぶが、「それよりもグリーンジャケットが欲しい」と言うタイガー。

ここで勝てば完全復活だろう。

[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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