3月はウインタースポーツとサマースポーツの切り替えどきだ。
3日に蔵王で行われたW杯女子ジャンプ蔵王大会第2戦で15歳の高梨沙羅がW杯初優勝。翌日4日には女子プロゴルフ開幕戦ダイキンオーキッドで新人斉藤愛璃が3人によるプレーオフを征し初優勝を果たした。ツアー11戦目の優勝は日本人最速記録。週末に2人の新しいヒロインが誕生したのだ。
高梨沙羅の優勝は時間の問題と思われた。飛距離では女子では圧倒的。しかし立ちはだかったのは米国17歳、サラ・ヘンドリクソンだった。ヘンドリクソンは12歳から本格的にジャンプに取り組み、今季開花。強さの秘訣は飛型のよさといえるだろう。助走から踏み切りにかけては男子選手顔負けと言われる。
一方高梨は2位が3回とあと一息だった。2月トルコでの世界ジュニアでは飛距離でヘンドリクソンを圧倒して優勝。さらに日本チーム念願の団体戦でも優勝し、そのまま臨んだW杯蔵王大会第1戦だった。1本目は2位。しかし2本目、高梨の初優勝かと思われたが、飛型点などで差をつけられた。しかし午後に行われた第2戦の2本目はコンディション悪化で中止となり、高梨の初優勝が決まった。
かつての日本のエース、原田雅彦の出身地北海道上川で育ち、幼少の頃から元選手の父親に指導された高梨沙羅。同時に行っていたバレーで柔軟で体幹がしっかりした身体が育まれた。連戦の疲労で両足のすねに痛みがありテレマークが取れず飛距離の割には高得点が取れなかったが、体調が戻れば鬼に金棒だ。2014年ソチ冬季五輪より採用される女子ジャンプ。新生に期待が高まる。
また、シーズン開幕の女子ゴルフで、世界ランク522位の斉藤愛璃が初優勝した。
昨年3回目の挑戦でプロテストに合格したルーキー。2日目に8バーディー、ノーボギーの驚異的なスコアで単独首位に立った。その結果、最終日は初めて最終組で優勝を争うことになる。出だしの1番では緊張しダブルボギー。しかし3番で20mのチップインバーディー。優勝戦線にふみとどまった。
16番を終わり、-12で2位に1打差のトップ。しかし試練はそこから始まった。17番では3m強のパーパットをはずす。しかし2位の李が18番でボギーをたたき、依然首位に留まった。パー5の18番。パーオンし残り1mのパーパットを残す。これを決めれば優勝。しかしボールはカップ淵を抜けていく。-10となり李、三塚とのプレーオフとなった。優勝経験豊富な2人とのプレーオフ。斉藤の善戦もここまでかと思われた。しかしプレーオフ最初のホールで4mを沈めるバーディ。ガッツを見せた。李が脱落した2ホール目。今度は三塚が1m弱をはずし、斉藤へ初優勝が転がり込んだ。駆け寄る同期の選手たち。斉藤の目には涙が浮かんだ。「うまくいかない2年があって、今があるのかなと思う」と言う。
初優勝は多分に沖縄の女神が微笑んでくれたものだった。「今のままでは技術を上げないと確実な優勝はできないだろう」と反省も忘れない。
新しい力は、スポーツ界と言えども大きなインパクトを与えてくれる。しかし2勝目は1勝目に比べてもっと難しいという。トップを目指し精進を重ね期待に応えて欲しい。
[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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