「早発閉経」と診断されて29歳で不妊治療を中止。キャスターの千種ゆり子さんがたどり着いた「産まないという選択肢」 | NewsCafe

「早発閉経」と診断されて29歳で不妊治療を中止。キャスターの千種ゆり子さんがたどり着いた「産まないという選択肢」

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
「早発閉経」と診断されて29歳で不妊治療を中止。キャスターの千種ゆり子さんがたどり着いた「産まないという選択肢」

気象予報士、キャスターとして『THE TIME,』(TBS系)や『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)などで活躍してきた千種ゆり子さん(37)は、26歳のときに難治性の不妊症である「早発閉経」と診断されました。

思いがけない病気と向き合った経験から、「女性が自分の身体に関心を持つ」ことの重要性を伝える活動を開始。野本梢監督と稲村久美子エグゼクティブプロデューサーと共に制作した映画『藍反射』(らんはんしゃ)は、第38回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門に公式出品作品として選出され、2026年3月6日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開となります。

前回の記事では、診断に至るまでの経緯と、専門的な医療へとつながっていった背景についてお聞きしました。つづく関連記事では、治療を一旦休むことに決めてから映画制作に携わるまでについて伺っていきます。

◆早期閉経の最先端治療へ

東京のテレビ局でキャスターを続けながら、早発卵巣不全の専門治療に向き合った日々

――29歳で聖マリアンナ医科大学の医師から、早発閉経において最先端の治療を行っている「ローズレディースクリニック」を紹介され、より専門的な治療を開始したと伺いましたが、その時はキャスターのお仕事をされていたのですか?

はい。2017年から土日の夕方のニュース番組に出演していた時期と治療の時期は重なっています。東京のテレビ局でキャスターとして働きながら、病院に通い、本格的な治療を開始しました。

――人前に立つ仕事をしながらの不妊治療は、心身に負荷がかかったのではないでしょうか?

確かに、キャスターの仕事をしながらの不妊治療は、体調的にも精神的にもつらいこともありました。ただ、カメラの前に立つと強制的に「オン」モードに入らざるを得ないので、気持ちを切り替えて両立していました。

テレビの仕事に限らず、排卵誘発を行いながら働いている方は皆さん、「そうせざるを得ない」状況の中で人知れず努力を重ねているのではないかと思います。

◆千種ゆり子さんが体験した治療ステップとは

「原始卵胞が一つも見つからない」現実と向き合い、29歳で治療に区切りをつけた理由

――治療をやめるというご判断は、いつ、どのような思いで決断されたのでしょうか。

28歳から排卵誘発剤で刺激する治療を2年間続けましたが、採卵はできませんでした。その後、次のステップとしてIVA(原始卵胞体外活性化法)という治療法に挑戦しようと思いました。

この治療ではまず卵巣を摘出し、卵巣組織の一部を採取し、原始卵胞の有無を確認します。実際に検査したところ、採取した組織片には原始卵胞が一つも見つかりませんでした。

その現実を突きつけられた時、「一旦やすもう」と自然と思いました。「結果が出るかどうか分からないことに、これ以上時間やお金を費やすのか?」と自問したことがきっかけでした。

それならば、その時間やエネルギーを社会や誰かの役に立つことに向けたほうが、自分らしい生き方なのかもしれない。そう思い、ピリオドを打つ決断をしました。

※IVAとは、体外活性化(in vitro activation)のことで、体外に取り出した卵巣組織に操作を加え、卵巣内の卵子(発育開始前の原始卵胞)を体外で成長開始させ、自身の体内に戻す新技術です。(出展:ローズレディースクリニック公式サイト)https://roseladiesclinic.jp/iva/

――近年、生殖医療や卵子提供など、選択肢を広げようとする議論も進んでいます。女性の選択肢が広がる動きについて、どのようにお考えですか?

現代は多様性の時代と言われていますし、「卵子提供を受けて子どもを持ちたい」と希望する人たちが、安心してそれを選択肢の一つとして検討できる社会になることは、とても良いことだと思います。同時に、正確な情報や安全な医療環境が整えられることが大切だとも感じています。

◆「一人じゃない」。支えになったこと

治療を中止してから訪れたご縁「子どもが欲しくて付き合うわけじゃない」と言ってくれた幼馴染と結婚

――不妊治療をされていた当時、パートナーはいらっしゃいましたか?

不妊治療をしていた当時、結婚を前提としたパートナーはいませんでしたが、今は結婚しています。治療に一区切りつけたあとに、幼稚園時代の同級生である夫と再会する機会がありました。

親同士が年賀状のやり取りをしていたご縁もあり、SNSで連絡をとりあって、久しぶりに会うことになり交際が始まりました。彼から交際を申し込まれた時は、「子どもが産めない可能性が高い」ことをすぐに正直に伝えました。

そのとき彼は、「子どもが欲しくてゆり子ちゃんと付き合いたいわけではない」と言ってくれて、ありのままの私を受け入れてくれました。

――不妊治療中、支えになったことはありますか?

未婚での不妊治療は、どうしても孤独になりがちです。そんな時、たまたま『あさイチ』(NHK系)で、「どう思う? “子どもがいない”生き方」という特集を見たんです。NHKアナウンサーの有働由美子さんが、産む機能があるのに無駄にしたのではないかと、気が狂ったように泣いたりして、病院通いをしたと話されていました。

スポットライトを浴びる立場の方でも、見えないところで苦しみを抱えている。その事実を知れただけで、「ひとりじゃない」と思えました。

◆体験を起点とした作品が完成

「子どものいない人生」を受け入れてから始まった映画という新たな挑戦

――NHKの番組に「救われた気持ちになった」経験は、その後の人生観や活動に影響を与えていますか?

そうですね。私自身が「遠くの人」に救われた経験が、野本梢監督と稲村久美子エグゼクティブプロデューサーと共に映画『藍反射』を制作する原動力になりました。

そのきっかけは、高校の同級生である野本梢監督に気持ちを打ち明けたことです。認知されにくい個人の悩みに寄り添った映画を生み出してきた野本監督が「妊娠できないかもしれない葛藤」や「人知れず抱えている孤独」を物語にすることで、救われる人がいるのではないか……そう思って、野本さんと、さらに彼女とこれまで何本か映画を撮ってきた稲村久美子さんにも相談をして、3人で映画制作を進めていくことになりました。

――『藍反射』は千種さんの体験を元にしたストーリーになっているのでしょうか?

RANHANSHA

いえ、『藍反射』は、私の体験を起点としつつも、脚本・監督の野本さん、稲村久美子EPと共に、さまざまな日常のリアルさを丁寧に盛り込みながら、多くの人が感じる思いを一つの物語として編み上げた作品です。

道田里羽さん演じる主人公の深山はるか(25)は、滝澤エリカさん演じる中学生の優佳里をはじめとするさまざまな人々との出会いを通じて、「他者を通して自分を見つめ直す」。 つまり「まなざしが反射する」ことで、新たな希望の光を見いだしていきます。

「生身の身体」を持つ私たちが向き合わざるを得ない普遍的な痛みや葛藤を、野本梢監督が優しく誠実なリアルをもって描いています。

主演の道田さんをはじめ、俳優の皆さんのお芝居が非常にリアルで、「あっ、こんな人、自分のすぐ隣にいそう」と思わせる自然さと人間味にあふれているので、いつの間にか登場人物の悩みを追体験しながら、少しずつ浄化されていくような感覚を味わっていただけるのではないでしょうか。

重いテーマかと思われがちですが、観た後は、自分や周囲の人にやさしくなれる、そんな作品になっています。製作陣・スタッフ・キャストを代表し、劇場でぜひお待ちしております。

【上映情報】
3/6(金)~12(木) ヒューマントラストシネマ渋谷
3/13(金)~26(木)キネカ大森
4/3(金)~9(木) テアトル梅田
4/11(土)~17(金) シネマディクト(青森)
4/11(土)~24(金) 鶴岡まちなかキネマ
ほか、シネマスコーレ(名古屋)、元町映画館(神戸)でも上映が決定。

>>この記事の前編 26歳の時「早発閉経」と診断。アラフォーになったキャスター・千種ゆり子が振り返る「努力では超えられなかった壁」


《OTONA SALONE》

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