更年期のホルモン補充療法(HRT)のメリット、そして知っておきたいデメリットとは?専門医が解説 | NewsCafe

更年期のホルモン補充療法(HRT)のメリット、そして知っておきたいデメリットとは?専門医が解説

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更年期のホルモン補充療法(HRT)のメリット、そして知っておきたいデメリットとは?専門医が解説

日本女性医学学会名誉会員であり、「ローズレディースクリニック」院長の石塚文平先生に、更年期についてのお話をシリーズで伺います。今回は「少し早めに閉経を迎えた女性」の健康管理についてお話を伺いました。前編『「少し早めの44歳で閉経したら婦人科に行くべき?」案外知られていない45歳以下での閉経のリスクと「健康寿命」の関係とは』に続く後編です。

【シリーズ・40代50代が向き合う更年期/変えられることを変える知識と、変えられないことを受け入れる知恵】#1後編

ホルモン補充療法(HRT)について知っておきたい「メリット」、そして調べたい「デメリット」

――40代後半など「やや早く」閉経を迎えると、人によってはぐっと疲れやすくなる方もいらっしゃいます。更年期症状がつらい場合、どのような対処法がありますか?

閉経を迎えた後の健康管理の選択肢のひとつに「ホルモン補充療法(HRT)」があります。研究によると、55歳ごろまで月経がある方は健康度が高い傾向が示されており、早めに閉経して体調の不調を感じている方にとって、HRTは有効な治療法となり得ます。

HRTは減少した女性ホルモンを補うことで、更年期特有の症状を和らげたり予防したりしながら女性の若さや活力をサポートすることを目的とした治療です。

ただし、HRTを受ける際には、乳がんや子宮体がんのリスクが高まることが心配されています。現在では適切な補充であればリスクは少ないと考えられるようになってきましたが、治療開始時や治療中に必要な検査をしっかり受け、自分の体の状態を随時把握することが欠かせません。

一方で、定期的に全身をチェックしながらHRTを行うことで、万が一がんが発生した場合にも早期発見につながり、同時に日頃から予防意識を高めることにもつながります。

――婦人科を初診で受診するとして、患者のほうから「HRTを受けたいです」と伝える時はかなり緊張しそうですが……。専門医に「受けたい」と伝えれば、実際に受けられるものなのでしょうか?

HRTについては、医師の考え方もさまざまです。もちろん話を聞かずに一律に「辞めたほうがいい」と否定するのも望ましいことではありませんが、「体調が悪いからとりあえずホルモンを補充する」など、まったく検査なしで始めることは避けるべきです。

HRTは単一的な治療法ではなく、一人ひとりに合わせた「オーダーメイド治療」です。大切なのは「HRTを受けたい」と伝えた後に、きちんと検査や問診を行ったうえで、必要に応じて慎重に検討してくれる医師を選ぶことです。

また、更年期の症状は必ずしもホルモン不足だけが原因とは限らず、漢方やサプリメント、運動や食生活の見直しによって改善が期待できる場合もあります。

エストロゲンが乳がんを「作る」わけではない

――HRTは、乳がんの既往がある方は受けられないと聞きますが、女性ホルモンと乳がんとの関係について、詳しく教えてください。

エストロゲンが直接的に乳がんを「作る」わけではありません。乳がんの発生には、遺伝、生活習慣、喫煙など、さまざまな要因が関わっています。ただし、一度できた腫瘍が大きくなる過程で、エストロゲンがその成長を促すことがあります。

一例として、若くして亡くなった女性を解剖したデータを参照すると、30代で亡くなった女性の39%の方がすでに乳がんの元となる因子を持っていたデータが存在します。

乳がんは、「芽」ができてから診断されるまでに約10年かかると言われています。つまり、エストロゲン自体は発がん物質ではありませんが、もともと腫瘍の芽を持つ人がHRTを行うと、腫瘍を成長させてしまう可能性があるのです。このため、乳がんと診断された方や、既往のある方にはHRTは推奨されません。

――ありがとうございます。最後に、閉経が早く健康面に不安を感じている女性が、婦人科を受診するときに気をつけるポイントを教えてください。

基本的なことではありますが、まず大切なのは信頼できる主治医を見つけること。きちんと検査を行い、家族歴や病歴を丁寧に確認して、治療法を提案してくれる専門医を選びましょう。

日本女性医学学会の公式サイトで専門医を検索できますので、そちらもご覧ください。※当院(ローズレディースクリニック)は認定医がおります。

「人生50年」と言われていた時代には、女性ホルモンは一生涯女性の体を守り続けていました。しかし、人生100年時代と言われ始めた昨今、体を守る「鎧」が外れた状態で生きていかなければならない時間も長くなります。日々の暮らしの中で本当に大切なのは、人生の長さより、生活の質(QOL)と健康寿命。信頼できる専門家と相談し、自分の体の状態と選択肢を理解したうえで、より良い健康維持法を検討することをおすすめします。

お話を伺ったのは

石塚 文平 先生(ローズレディースクリニック院長)

プロフィール

ローズレディースクリニック院長。聖マリアンナ医科大学名誉教授。昭和大学医学部卒業後、慶應義塾大学産婦人科、 カリフォルニア大学留学をへて、聖マリアンナ医科大学産婦人科教授、同大学生殖医療センタ一長、同大学高度生殖医療技術開発講座特任教授を歴任、2014年に同大学名誉教授、同年口ーズレディースクリニック院長に就任。早発卵巣不全の研究と治療に長年とり組み、日本国内のみならず、海外からも患者が訪れる。


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