本作は、『アクト・オブ・キリング』、『ルック・オブ・サイレンス』で世界的に注目を集めたジョシュア・オッペンハイマー監督が主演にティルダ・スウィントンを迎えた黙示録的ミュージカル。
舞台は、環境破壊によって居住不可能となってから25年後の地球。ある日、豪華な地下シェルターで暮らす富裕層の家族のもとに、外の世界からひとりの若い女性が現れる。そのことをきっかけに、孤立しながらもルーティーンを守ってきた家族の脆い日常が静かに崩れはじめ、やがて、自らの過去と存在の真実と対峙することになる…。

解禁されたメインビジュアルは1点。母親(ティルダ・スウィントン)が優雅に鎮座する周囲に、父親、息子、執事、医者とともに暮らす「家族」の姿が捉えられており、地下シェルターらしからぬ豪奢でチグハグな内装や調度品、交わらないそれぞれの視点の先が、彼らが暮らすいびつな世界を更に浮き彫りにしている。

しかし「『アクト・オブ・キリング』が公開された後、私は安全にインドネシアに戻ることはできませんでした。なので、同様の手法で富を蓄える他の地域の寡頭支配者たちについて調査を始めたのです」そして「私は中央アジアで、石油権益を得るために暴力を行使した石油王を見つけました。彼は家族のために防空壕を購入していたのです」と、奇妙な出会いを語る。
そして、石油王が家族と共に案内してくれたその場所で「どうやって脱出するのか?」「逃れるべき罪悪感や惨事とどう向き合うのか?」「愛する者を置き去りにした後悔とどう向き合うのか?」「この場所で新たな世代を育てながら、彼らの過去を塗り替えるにはどうすればよいか?」「この場所で育てる新たな世代に、彼らの歴史を書き換える手段として、どうやって彼らの物語を語ればよいか?」など様々な質問が頭をよぎったという。
しかし、彼ら自身をよく知らないことに加え、防空壕という発想そのものが、現実逃避の象徴であり「彼ら自身答えられないだろう」と悟ったこと、当初監督は、彼らが移り住んでから25年後を舞台にドキュメンタリーを撮ることを考えたが断念、帰路に観たジャック・ドゥミのミュージカル映画『シェルブールの雨傘』をきっかけに25年後の地下シェルターで暮らすアメリカ人家族をミュージカル仕立てで描くことを考え、「アメリカ的本質を象徴する<絶望的否認と希望>を抱えた家族像を描こう」と決意したことを語っている。
『THE END(ジ・エンド)』は12月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国にて公開。