*TOP画像/歌麿(染谷将太) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」21話(6月1日放送)より(C)NHK
吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第21話が6月1日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
狂歌師・南畝の助言で、自分の強みに気付いた蔦重
本放送では、新勢力と既存勢力が一つのテーマになっていたように思います。新しいものにも古いものにも、それぞれ良さと難点があります。
蔦重(横浜流星)は『雛形若菜』に少し手を加えた『雛形若葉』を出版し、西村屋を吉原から追い出し、歌の名を売り、錦絵でも耕書堂の名を上げようと期待に胸をふくらませていました。けれども、現実はそう何事もうまくいくものではありません。『雛形若葉』を出版し、読者から二番煎じはお呼びではないこと、さらには錦絵の色の出一つとっても老舗との力の差を痛感する結果に。

錦絵 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」21話(6月1日放送)より(C)NHK

歌麿(染谷将太) 蔦重(横浜流星) 南畝(桐谷健太)大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」21話(6月1日放送)より(C)NHK
また、自身の弱みや不安を仲間に打ち明けることは、成長にとって重要な一歩なのかもしれません。蔦重が「いや ここんとこ老舗の本屋との力の差を感じてて」「俺ゃ ちゃんと奉公もしてねえし」と悩みを口にすると、南畝(桐谷健太)は「けど そこが いいとこじゃないか」と励まします。こう考える理由について、蔦重は経験が浅いからこそ、ずっとやってるやつには出せないものを出せると述べていました。『細見』がせんべえみたいになったときのおどろきを伝えた上で、蔦重には「そう きたか」がお似合いだといいます。虚勢を張らず、自らの現状を正直に話すところも蔦重の良さであり、蔦重の成功の秘訣なのかもしれません。
また、本放送で、蔦重は「お前は 蔦屋史上とびきりの「そう きたか」になるんだ」と、歌麿を鼓舞していました。歌麿は絵を描けて、家があれば幸せだと考えており、有名になることに関心がないようですが、彼の才能が蔦重の企画によって今後どう開花するか楽しみですね。
吉原における洒落た遊びと江戸城における残酷な遊び
江戸では狂歌ブーム真っ只中ですが、吉原にもその流行が広がっています。

宗次郎(栁俊太郎) 誰袖(福原遥) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」21話(6月1日放送)より(C)NHK
誰袖(福原遥)は旗本の宗次郎(栁俊太郎)に狂歌で恋心を伝え、彼の心をいっそう強く惹きつけます。宗次郎から先日贈った紙入れについて尋ねられると、「わすれんとかねて祈りし 紙入れのなどさらさらに 人の恋しき」と応えていました。この後、「けんど 紙入れの中が すっからかんで 寂しうあらんす」と付け足し、紙花をもらうことも忘れません。

紙花 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」21話(6月1日放送)より(C)NHK
史実においても、吉原は社会的に地位がある男性を主な客としていたため、花魁には教養や自頭の良さが求められていました。本放送における誰袖のように、賢く、言葉を巧みにあやつる花魁は少なからず存在しました。
吉原で知的な遊びを楽しむ男たちがいる一方、江戸城では松前家第八代当主・道廣(えなりかずき)が宴会で恐ろしい遊びを繰り広げていました。

道廣(えなりかずき) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」21話(6月1日放送)より(C)NHK
なんと、女性を花咲く木に縛り、そのまわりに皿を並べ、皿に狙いを定めて撃っていました。弾丸がわずかでも狙いからズレれば、女性の命はないでしょう。この女性の夫は恐怖で震える妻の姿を嘆き、「お許しくださいませ!どうか!」と、道廣に懇願しています。女性の夫と道廣の会話から察するに、この男性が粗粗をし、許しを乞うたところ、このような恐ろしい状況になったのでしょう。
道廣の不気味に笑う目に異常な悪趣味と冷酷さを感じ取ったのは意次(渡辺謙)だけではなく、視聴者も同様だと思います。また、この残虐な遊興を笑って見ている治済(生田斗真)と重豪(田中幸太朗)にも闇を感じました。
今後の政策において蝦夷地が鍵となる今、道廣は重要な立ち位置になると予想されますが、本作でどのように描かれるのでしょうか。ちなみに、史実によると、藩の妨げになる言動が目立ち、隠居を命じられた人物です。ただし、道廣が本作に描かれているように残虐な趣味、異常な気質を持っていた記録は見当たらず、本作におけるこの衝撃的なシーンは傍若無人なキャラクターを誇張したものだと考えられます。
本編では、狂歌が飛び交う吉原の恋模様と、江戸城で繰り広げられた異常な遊びを通して、時代の光と闇を描き出しました。
▶▶べらぼうの緊迫シーンにワインが彩りを添えている!?「意外な飲み手」の姿と、蔦重は「ワインを飲んだことがない」といえる根拠とは
では、物語の中で印象的に登場したワインの意味と、当時のワイン事情をひもときながら、江戸の人々が味わった“異国の気配”をたどります。