25~44歳女性の就業率は上昇し続け、約8割が働く時代。それに伴い、生涯未婚率も増加の一途を辿っています。「結婚したいのに出会いがない」「交際はするが成婚に至らない」——なぜ、こうした悩みが生まれるのでしょうか?
アラフォー・アラフィフ専門の婚活カウンセラー・伊藤友美さんのもとには、さまざまな理由で婚活に行き詰まる女性たちが訪れます。本シリーズでは、彼女たちの悩みを深掘りしながら、婚活成功のヒントを探ります。
今回は、マンションを買おうかと迷っている36歳女性のケース。カウンセラーとの対話によって自分の本心へと導かれて行く様子をお届けします。
※プライバシーを考慮して、事実関係の一部を変更しております。
【シリーズ・婚活百景#35】
管理職になりたい36歳女性。結婚しないなら不倫でいい?
公務員のH絵さんは、36歳の地方公務員。32歳のときに知り合った10歳上の男性と、遠距離不倫を続けています。地元で自営業を営んでいる彼は経済力があり、いわゆる遊び慣れている男性。あらゆる面で余裕が感じられるところがH絵さんには魅力に映ります。
H絵さんは、彼と結婚する未来はまったく想定していません。彼は家庭を壊すつもりはなく、H絵さんとのことは割り切ったつき合い。H絵さんは「いつかは誰かと結婚するだろうな」と考えていますが、「それは今じゃない」とも思っています。30代のうちに仕事で結果を出して評価され、管理職になりたいという目標があるからです。結婚を想定しない不倫関係は、H絵さんにとっては好都合なのでした。
居心地のよい「ぬるま湯」のような不倫に浸かって
容姿に恵まれ、自分磨きも怠らないH絵さんは、「いつまでも恋愛をしていたいし、女性として見られたい」と思っています。ところが、自分の両親を見ても、既婚の友人の話を聞いても、結婚するとそれはかないそうにありません。「ときめきを失い、夫から女性として見られなくなるくらいなら、結婚なんて当分したくない」というのが、H絵さんの本音です。
不倫相手の彼とは、遠距離ということもあって2、3カ月に1回会えればいいほう。仕事が忙しいH絵さんにとってはそれくらいがちょうどいいペースです。彼は、H絵さんのことをまるで「お姫さま」のように扱い、甘やかしてくれます。車の乗り降りするときはドアを開けてエスコートしてくれます。プレゼントやお花を欠かさず、彼がH絵さんのために予約してくれるのは、自分だったら記念日に使いそうな値段が高めのイタリアンや和食ばかり。長年のつき合いだから居心地もよく、親しい友人には「ドロ沼不倫ならぬ、ぬるま湯不倫だね」と言われますが、H絵さんにとっては理想的な関係でした。
ある日、白髪を発見。自分の「老い」を意識させられて
そんなH絵さんの心境に変化が訪れるできごとが起こりました。ある朝、鏡を見ていたH絵さんは生え際に白髪を見つけたのです。しかも2本! 1本なら「気のせいかな」とやり過ごせても、2本となると現実を直視せざるをえません。それは、H絵さんが初めて自分の「老い」を意識した瞬間でした。いつか自分にも、老いる日がくる。そのとき不倫相手の彼は、H絵さんを変わらず大事にしてくれるだろうか。もちろん、そんな未来は想像できませんでした。彼が何よりも自分の〝若さ〟に価値を見出していることをH絵さんは自覚していたのです。
「ぬるま湯のよう」だと思っていた不倫相手との関係が、白髪を発見した日から少しずつ、ひんやりと感じられるようになっていきました。
「マンションを買ったら、結婚が遠のくかも…」
H絵さんの気持ちの変化は、意外な形で表れました。それまで興味がなかったのに、ひとり暮らし向けの分譲マンションが気になるようになったのです。H絵さんが住んでいるのは賃貸のワンルームマンションで、週末になると郵便受けには新築中古を問わず、マンションのちらしが差し込まれます。これまでは気にも留めずに捨てていましたが、気づくとちらしを眺めながらローンの返済額を計算したり、家具の配置を想像したりするように。「マンション、買おうかな」と思いつきが、現実味を帯びていきました。
一方で、「マンションを買ってしまったら、ますます結婚が遠のくかも…」という思いもよぎります。職場でも、独身の女性がマンションを買ったと聞くと、「結婚はあきらめたんだね」とか「一生働く覚悟なんだね」とかいう声が聞こえてきます。「事情も知らないのに失礼な」と思いつつ、H絵さんのなかにも「マンションを買うということは、結婚はともかく、一生仕事をし続ける覚悟を持つこと」という先入観はありました。
「まずは結婚したいかどうかをよく考えてみて」
H絵さんが私の著書『結局、理想を下げない女が選ばれる』を手に取ってくれたのは、ちょうどその頃のことです。その後、初めてのオンライン相談で、H絵さんは「いつかは結婚したいと思っていますが、このままでは結婚できないのではないかと思っています」と将来への不安を打ち明けてくれました。
H絵さんは、ぬるま湯のような不倫関係を続けていること、そして一人暮らし用のマンションを買おうか迷っていることも話してくれました。そのとき私がお伝えしたのは、「まずは結婚したいかどうかをよく考えてみてください」ということでした。するとH絵さんは、「伊藤さんは、婚活塾や結婚相談所をされているので、実は、まずは営業されるのかなと構えてたんですけど、まさか結婚したいかどうか考えてと言われるなんて」と、少し拍子抜けした様子でした。
何度もお伝えするように、婚活のスタートはまず自分の本心に向き合い、本当に結婚したいのかどうかを自覚することです。これは絶対に外せないプロセスです。
婚活相談で伝えた2つのこと
思ったことを明るくストレートに言えるH絵さんに、私がお伝えしたのは次の2点です。
- 不倫関係はすぐに解消するべき。
- マンション購入は、結婚の足かせにはならない。
結婚は、1対1でしか築けない関係です。私はよく、「あなたの隣の席が空いていない状態では、誰もそこには座れませんよ」とお伝えしています。不倫であろうとセフレであろうと、継続的につき合っている相手がいると、当然ながら婚活はうまくいきません。ときどき「長くつき合っている相手がいるけれど、結婚相手としては物足りないから」という動機で片手間に婚活を始める人がいますが、そのような状態では、理想の結婚相手に出会えることはほとんどありません。
もし本気で結婚相手に出会いたいなら、不倫相手とは例外なくすぐに手を切るべきです。H絵さんにも、「今ここで、連絡先を消してもいいくらいです」とお伝えしました。その後、H絵さんは、4年つき合った不倫相手とあっさりお別れしました。おそらくH絵さんのなかでは、彼との関係はすでに終わっていただと思います。私のところへ相談に来てくれたのも、「誰かに背中を押されたい」という思いがあったからでしょう。もともと割り切った関係だったこともあり、彼から強く引き留められることもなかったそうです。相手の男性にしてみれば、「ドロ沼化することなく関係を解消できてよかった」というところかもしれません。
本記事では、ぬるま湯のような不倫関係に甘んじていたH絵さんが、カウンセラーとの対話により前へ進む覚悟を決めた顛末をお届けしました。
続いての▶▶「婚活してるの?だったら、オレはどう?」と聞かれて…。バリキャリ36歳、不倫を卒業して結婚に向かえるのか
では、気になる男性からアプローチを受けたH絵さんのお話をお伝えします。