こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
立春の次の節気、2025年の「雨水(うすい)」は2025年2月18日から3月4日。
1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
肝の異常は心に飛び火しやすい。心に影響が及ぶ前にコンディションを整えて
春は肝の機能を気遣ってほしい季節ですが、肝の異常は心の機能に“飛び火”しやすい傾向があります。心に飛び火してしまう前に、“肝”の機能への意識を高めてみましょう。
「冬は腎の機能をケアしてあげて」のコラムを記載させていただいた際に、腎と肝のつながりをお話させていただきました。腎と肝がそれぞれ溜めている“精”と“血”のどちらか一方が不足すると、他方が転化して補い合う関係です。この関係を中医学では「精血同源(せいけつどうげん)」と表現しています。春は“肝”の機能のケアに意識を向けて欲しい季節ですが、肝と関係性の高い“腎”の機能のケアも忘れたくないところです。
腎のコンディションは、「食べて腎精を溜めること」を必要とします。食生活の乱れや急激なダイエットなどで「食べる」ことが不安定になると、腎精が溜まらずにコンディションが整わなくなります。特に、腎の機能を支える血液や津液(しんえき)が顕著に少なくなる「陰虚(いんきょ)」の状態は腎の陰陽バランスが崩れている状態で、腎の機能に相対的な「熱」があると捉えます。
腎の機能に相対的な熱が見られる場合、腎とつながりの深い肝の機能にも相対的な熱が伝わるケースがあると中医学は考えています。さらに、肝に相対的な熱が見られる場合、かなりな確率で“心”に熱がある時の症状が見られることから、「肝の異常は心に飛び火しやすい」と捉えています。春は肝の機能に影響が出やすい季節です。心への飛び火が起きる前に、肝のケアを行いたいですね。
相対的な熱による肝気の高ぶりを鎮めて、肝の機能を正常な働きにするおすすめの食材は、春菊・セロリなどの“香りのある青菜”です。香りはそれほどありませんが、スーパーでよく目にするようになった豆苗も肝気の流れを正常にする働きに優れるのでおすすめです。
春菊・セロリ・豆苗、いずれも生で食べても良いでしょう。“青菜の香り”をより感じられる食べ方なので、付け合わせをこの時季だけ“生の春菊”にするのもおすすめです。
最近はキャベツなど緑色の野菜の価格が高くなる一方ですが、この季節の身体に嬉しい比較的安価な“香りのある青菜”を手にしていただけると、肝の機能が喜ぶと思います。
香り高い青菜で肝気の高ぶりを抑える
肝の高ぶりを鎮める“香りのある青菜”を使ったレシピで、腎の機能もケアできるものを2つ紹介させていただきます。
1つ目は「春菊・菊花・なつめ味噌をのせた蒸し山芋」。腎精を補う山芋が、相対的な熱の発生源となる腎のコンディションを整えます。“蒸す”調理方法は油を使わないので消化機能に優しいこともおすすめポイントです。肝の熱を取ることに優れる春菊・菊花を酸味がきいた酢味噌で和えることで、食材の効能的にも味覚の効能的にも肝への働きかけが期待できます。種を取り除いた乾燥なつめとベビー帆立をみじん切りにして酢味噌に合わせることで、砂糖を使わずに甘味・うま味を感じられる身体に優しい組合せです。
2つ目は「いか・セロリ・新たまねぎのレモン炒め」。腎の機能を支える血液や津液(しんえき)を補う効能が期待できるいかを使って、相対的な熱の発生源となる腎のコンディションを整えます。そこに、肝気の高ぶりを鎮めることにすぐれるセロリを合せて、レモン・梅干しの酸味で肝気を引き締めます。酸味に甘味を足すと美味しさが増すので、みじん切りにしたなつめを少し多めに加えて炒めます。旬のはしりの新たまねぎを加えることで、全身の気のめぐりに働きかける効能も期待できます。
暦の上では、そろそろ春のピークに差し掛かります。次回から「春の虫が動き始める」啓蟄(けいちつ)です。
連載中の「田野岡メソッド」が書籍になりました!
「身近にある旬の食べ物が、いちばんのご自愛です!」 田野岡メソッド連載で繰り返し語られるこのメッセージが、1冊の書籍にまとまりました。近所のスーパーで手に入る身近な食材を使い、更年期をはじめとする女性の不調を軽減する「薬膳」を日常化しませんか?
日本の漢方では「その症状に処方する漢方薬」が機械的に決められていますが、本来の中医学では症状と原因は人それぞれと捉えます。それに合わせた効果的な食事を「薬膳」とし、食で養生するのが基本なのです。
田野岡メソッドに触れると、スーパーの棚が「薬効の宝庫」に見えてきますよ!