「最近、物の名前が思い出せない」これって認知症の始まりなの? 生活にちょい足しするだけで一生「クリアな脳」でいる秘訣を「長持ち脳」メソッド開発者に聞いてみた | NewsCafe

「最近、物の名前が思い出せない」これって認知症の始まりなの? 生活にちょい足しするだけで一生「クリアな脳」でいる秘訣を「長持ち脳」メソッド開発者に聞いてみた

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
「最近、物の名前が思い出せない」これって認知症の始まりなの? 生活にちょい足しするだけで一生「クリアな脳」でいる秘訣を「長持ち脳」メソッド開発者に聞いてみた

みなさんこんにちは、オトナサローネ編集部 星です。

最近、「あ~アレです、アレが……(名前が出てこない!)」という経験をすることが増えていませんか? 私は毎週のようにあります。

アラフィフになって強く思うのが、身体の健康と同じくらい「脳の元気さ」も大切だということ。実際、私の親戚の88歳のマダムは、いつ会っても頭が冴え渡り、新しいデジタル機器にも興味津々。友人たちと交流を楽しみながら、一人暮らしを謳歌しています。「こんなふうに年を重ねられたらいいなぁ」と憧れずにはいられません。

高齢者の約4人に1人は認知症または認知症予備軍(2022年時点。厚生労働省研究班データから)と言われる現代。2025年には認知症または認知症予備軍の数が約1000万人に達すると推計されています(2024年 厚生労働省発表)。決して他人事ではありません。

そんな折、「脳が長持ちする方法を研究している先生がいる」という情報を耳にしました。これはぜひ詳しく知りたい! と思い、理化学研究所の大武美保子先生にお話を伺ってきました。

ロボットの研究をしていた私が、全力で認知症の研究をするようになった理由

──先生はもともと、ロボットの研究室に所属なさっていたそうですが、認知症の研究を始めたきっかけというのは、何だったのでしょうか?

私が認知症に向かい合うことになったきっかけは、祖母が認知症になったことです。祖母の「知」が失われていくのを目の当たりにするのは、本当に寂しいものでした。施設に面会に行っても、会話が繋がらないのですよね。それをなんとかしたいと考え抜く日々のなかで、ふと「写真」を使うことを思いついたのです。

祖母のアルバムからモノクロの写真を選んで面会のときに見せたところ「この着物の色はオレンジだったのよ」と急に話し始めました。写真を見たことで、記憶が呼び覚まされたのです。そこから、私の研究が始まりました

うまく手助けすることによって祖母と会話できた経験から、「会話は脳の状態を変える可能性がある」「会話で脳を変えよう」と思いました。認知症は、遺伝が関係するものもありますが、打ち手は山ほどあるのです。

予防習慣の大切さは、歯の健康を例にすると分かりやすいと思います。口腔ケア習慣の普及によって、55~60歳で歯がない人の割合が、1975年の20%から、2005年には2%まで減りました。口腔ケア習慣と同じように、認知症予防の習慣を普及させることで、認知症を減らせると思っています。

認知症に対して何も予防をしていないのは、歯磨きをせず総入れ歯になるようなものではないでしょうか。

──私も祖母が認知症だったので、自分も発症するのではと不安でした。予防法をぜひ知りたいです!

予防は40代、50代から行うことが大切です。アルツハイマー病の原因物質は、発症の2~30年前から溜まり始めているのです。そして、年を取ってから脳が縮んで顕在化します。こうなると、外から分かるくらいの機能低下が起こってしまいます。認知症というと年を取ってからのことだと思われていますが、実は原因はかなり前(40代~50代)から仕込まれているのです。

40代、50代は、老化現象が顕著になってくる年代です。ぜひ、体の老化と一緒に脳の老化も対策してください。例えばウォーキングで身体と脳の両方を活用することもできます。

「歩く」という脳の回路は、ほうっておくと足が上がらなくなり、つまづきやすくなります。変化しつづける自分の体にあったアップデートをしないといけないのです。たとえば、足首に重りをつけて歩いてみると「いつもと違って歩きにくい」という体験ができます。思ったように足が上がらない、これが年をとったときのシュミレーションです。

筋肉を減らさないことと、自分の体に脳がついていけるようにすることが大切です。

歩くという動作は、ロボットにやらせようとしても、なかなか難しいものです。それを人間は脳でやっているのです。知らず知らず「ちょっと傾いている」ときも、それを脳が制御している。床がざらざらか、つるつるかも考慮して、無意識に計算しているのです。みなさん簡単に歩いているようで、すごく複雑な脳の使い方をしている。これがとても良いエクササイズになるのです。

「体験を話す」ことは脳のエクササイズになる

──ほかにも脳を活性化させる方法はありますか?

「脳にとってのエクササイズ」とは、しっかり情報をインプットし、アウトプットするということです。ひとつづつ丁寧にやることが大切です。

ウォーキングをするにしても、せっかく歩くのなら、「何かを見てみよう」と計画したり、「体験したことを誰かに話そう」と意識したりすることが、認知機能を退化させないためのカギです。認知機能を保ち、底上げするには、「何をするか」だけでなく、「何を」「どう行うか」がとても重要になってくるのです

「体験したことを誰かに話そう」としたときに「思い出すのに時間がかかるようになった。アレ、ソレということが増えた」と感じる方は、なおさら人に「最近の話」をすることを強くおすすめします。

ここ1週間、ここ3日、昨日、今朝、今さっき。新しく体験したことや得た知識、発見や驚きなどを話題にすることが脳を長持ちさせることにつながります。体験したことを「覚える」。そして「覚えておく」期間を経て、「思い出す」。この3つのプロセスを日頃から行う習慣をつけておくと、脳の全体的な記憶機能を底上げできます。

私がチームで取り組んでいる「共想法」では、認知症の前段階として低下しやすい「3つの認知機能」を働かせることで、脳を長持ちさせます。

加齢とともに低下しやすい「3つの認知機能」

──脳を長持ちさせるために3つの認知機能を働かせる……具体的には、どんなことでしょうか?

加齢とともに低下しやすい認知機能はおもに3つです。

1つめは、「体験記憶」。最近の体験を覚えたり思い出したりすることです。
2つめは、「注意分割機能」。複数のことを同時に行なうことです。
3つめは、「計画力」。計画や段取りを考えることです。

「共想法」では、会話のしかたを工夫することでこの3つの認知機能を活発に働かせます。

共想法は、数人の参加者が、あらかじめ設定されたテーマに沿った写真と話題を持ち寄り、全員が「話す」「聴く」「質問する」「(考えて)答える」ことを順番に体験します。

自分が持っていった写真がホワイトボードに映し出され、5分程度でその内容について説明をします。その後、他の参加者からの質問を受けることによって、自分の中で写真についてより深く考えることになります。自分の番が終わったあとには、他の参加者の写真を見ながら話を聞き、質問を考えます。

このように、持ち時間や順番を明確に決めることによって、「聞くこと」「話すこと」のどちらか、もしくは両方が苦手な人でもスムーズに会話ができ、3つの認知機能を働かせることができます。

共想法の司会者、ほのぼのするロボット「ぼのちゃん」

──私が参加した共想法では、平和な雰囲気のロボットが司会をしていました

司会しているのは、ロボットの「ぼのちゃん」です。

共想法では、ルールにのっとって会話を進めます。そこで「○○さん、写真についてお話しください」と促し、1分間経つと「□□さん、写真についてお話しください」と、話の途中であっても次の人の時間であることを伝えてどんどん進めていくのがぼのちゃん流です。

──自分の持ち時間より長く話しているとツッコミをいれてくれますよね

はい、一人ずつの発話量を計測しているのです。話し過ぎの人だけでなく「話していない人」も把握できるので、質問の時間帯になかなか口を開けない人がいたら「△△さん、いかがですか?」と発言を促してくれるのです。

これまでに、共想法を体験した方は、延べ1万人を超えました。

100歳の方が在宅で参加してくださったり、「話すのが楽しくて」と、亡くなる2週間前まで介護施設から参加してくださった方もいらっしゃいました。今後は、ショッピングモールや、カフェ、公民館などにこの「ぼのちゃん」を設置して、全国で共想法が開催できればいいなと思っています。

本記事では、大武先生が認知症の研究をはじめたきっかけや、脳を活用するのに重要な3つの認知機能についてお伝えしました。
続いての▶▶「脳を長持ちさせる『3つの認知機能』を日常で活用する方法とは? 年をとっても元気で楽しく暮らすために大切なことは
では、3つの認知機能を日常で活用する方法や、90歳を超えても元気いっぱいだった「ぎんさんの4人娘」と大武先生の出会いについてお届けします。

出典:認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計
https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf


《OTONA SALONE》

特集

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