25~44歳女性の就業率は上昇し続け、約8割が働く女性という現代。それに合わせて、女性の生涯未婚率も増加の一途を辿っています。 結婚をしたいけれど出会いがない、成婚に至らないということはなぜ起きるのか、働く女性は婚活にどのような悩みを抱えているのでしょうか。
アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラーの伊藤友美さんのもとには、さまざまな悩みを抱える婚活女性が訪れます。
今回は、「結婚の決め手がない」と前に進めずにいた35歳女性のエピソードを紹介します。
※プライバシーを考慮して、事実関係の一部を変更しております。
【働く女性の婚活百景 #26】 前編
交際6年「結婚するならこういう人がいいんだろうな」と思える彼はいるけれど
婚活女性のお悩みは「結婚したいのにできない」ことばかりではありません。結婚に対する価値観が多様化している今、「結婚したほうがいい(あるいは結婚するべき)と思っているのに、結婚に踏み切れない」と悩んでいる人も増えています。
Y奈さんは、大手ゼネコンに総合職として勤務する35歳。6年間おつき合いをしている同い年の彼がいます。Y奈さんも仕事が充実していますし、金融機関に勤める彼も忙しくて、しょっちゅう会えるわけではありません。週に1~2回くらいは、LINEをしたり、電話で話したりしますが、会うのは月1回程度。お互いにそれぐらいがちょうどいいペースだと感じているので、特に不満はありません。
彼とは、会社の同僚に誘われた食事会で出会いました。彼は穏やかでまじめな性格で、仕事の話もちゃんと通じます。一緒にいると気がラクで、この6年間、ケンカらしいケンカはしたことがありません。「結婚をするなら、こういう人がいいんだろうな」とY奈さんは感じています。結婚の約束はしていませんが、「このままいけば、いずれは結婚することになるかもしれない」という暗黙の了解のようなものは、つき合い始めた当初から共有してきました。
仕事が充実している今、「結婚はできるだけ先延ばしにしたい」
とはいえ、Y奈さんは今すぐ結婚したいとは思っていません。むしろ、仕事が充実している今、結婚はできるだけ先延ばしにしたいというのが本音です。1年ほど前にチームリーダーを任されてからは、今まで以上にやりがいがあって仕事が楽しくなりました。さらに「チームとして結果を出して、評価されたい」という欲も出てきて、毎日が充実しています。
仕事もうまくいっているし、彼との関係も安定していて、今の生活に不満はありません。ひとり暮らしの今は家事も最低限で済みますし、何時に帰って何時に寝ようと誰に文句を言われることもない気楽さがあります。結婚すれば、相手の生活のペースに多少は合わせなければいけなくなるでしょう。
Y奈さんは、自分の年齢から「結婚ということになれば、出産のことも考えざるを得ないだろう」と考えています。ただでさえ「結婚はどうする」とうるさい両親に、結婚したとたん「早く子どもを」と急かされることを想像すると気が重くなります。
両親は不仲で、結婚している友人たちは夫の悪口ばかり
Y奈さんが結婚に前向きになれない理由がもうひとつあります。それは、夫婦という関係にポジティブなイメージを持てないこと。Y奈さんは、もともと結婚に夢や憧れを抱いたことがありません。両親はどちらかというと不仲で、子どもの前ではケンカもしない代わりに事務連絡以外の会話もないという冷めきった夫婦です。「結婚して30年以上たてばそんなものかな」とY奈さんは思っていますが、両親を見ていると夫婦という関係を維持する虚しさを感じます。
両親だけではありません。会社にいる既婚者の先輩や同僚はパートナーへの不満をよく口にしているし、結婚している友人たちは、集まれば夫の悪口で盛り上がっています。小さい子どもがいる人にいたっては、不満をこぼす暇もないほど忙しくて大変そうです。時短勤務で仕事が終わらず、お昼休憩すらまともに取れずに席でお弁当をかっこんでいる同僚を見ていると、気の毒に思うと同時に「こんな生活はしたくない」と思ってしまいます。
結婚も出産も、望めばできるとは限らない
結婚に前向きになれずモヤモヤしているY奈さんですが、一方で「結婚しない」という決断もできずにいます。「生涯独身でいる未来は想像できないし、子どもを持たなかったことを将来後悔するような気もする」という迷いがあるからです。
そんなY奈さんが、私が不定期に開催している「パートナーシップ向上セミナー」を受講されました。この講座は、結婚相手や彼との関係をさらに良いものにすることが目的の、婚活している方に限らず、さまざまな女性たちが受けてくださっているものです。
Y奈さんから講座中に質問され、私はこうお伝えしました。
「Y奈さんは、ご自分がその気になれば今の彼と結婚できるし、望めば子どももできると思っていらっしゃいますが、そうとは限りませんよ」と。もしかしたら彼にほかに好きな人ができるかもしれませんし、結婚しても子どもを授からないことだって十分あり得ます。
そもそも「結婚したら、出産することを考えなければ」という考えは、Y奈さんの固定観念です。本来は、結婚も出産も仕事も、自分で自由に決めることができるはず。あらゆる可能性を考慮した上で、「自分が本当はどうしたいのか」を考えてみることをアドバイスしました。
「やっぱり結婚っていいことばかりじゃないよね」
そんなY奈さんに転機が訪れたのは、年末に帰省したときのことでした。小学校の頃からの親友に子どもが産まれたので、家に遊びに行ったのです。赤ちゃんはかわいくて、母になった友人は幸せそうでしたが、父親になっても仕事や趣味のペースを変えようとしない夫に対しては不満があるようで、Y奈さんはグチを聞かされました。
そこに、たまたま居合わせたのが友人の姉のT子さんでした。ひと回り年上のT子さんは朗らかで面倒見のよい性格で、子どもの頃は友人だけでなくY奈さんのこともかわいがってくれました。久しぶりに会ったT子さんは、相変わらず朗らかで幸せそうです。たしか20代で結婚して、お子さんがいないので夫婦2人で夫の赴任先である仙台で暮らしていると聞いています。
友人の話を聞いて、Y奈さんがつい「やっぱり結婚っていいことばかりじゃないよね」と口にすると、T子さんは「あら、そんなことないわよ」と笑顔で否定したのです。
▶つづきの【後編】では、Y奈さんの結婚にうしろむきな発言に対して、笑顔で否定したT子さん。その理由とは? __▶▶▶▶▶