記録的な寒波に覆われる日本。地球の反対側の南半球オーストラリアでは今は真夏。メルボルンではテニス4大大会の初戦となる全豪オープンテニスが行われている。連日熱い戦いが茶の間に送られ、見る者には熱い季節が恋しくも感じられる。
とはいえ真夏のハードコートの上での選手たちの体への負担は相当のようだ。毎年この大会を季節の良い3~4月への移行が話題に上がるが、夏休みでの開催に固守する全豪テニス協会に押し切られるらしい。
そんな過酷な戦いの中で、42歳のクルム伊達公子の活躍は心を踊らされた。大のシングルス1回戦。相手は第12シードのナディア・ペトロワ。4大大会での優勝こそないが準優勝2回、ツアー13勝の強敵。これまでの対戦成績1勝1敗。第1セットの第7ゲームから8ゲームを連取するなどと相手を圧倒して快勝。この勝利は2011年のウィンブルドン以来となる4大大会シングルス初戦突破だが、全豪では一度現役を引退する前の96年以来17年ぶりの初戦突破。この日42歳109日の勝利は、全豪最年長勝利記録40歳138日を更新した。17日の2回戦も全豪準優勝の経験のある25歳シャハー・ピアーを2-0で退けた。得意のライジングショットが決まり、往年の復活ぶりを感じさせた。「4大大会で2勝。こんな日が来るとは思えなかった」微笑む。3回戦はダブルスと合わせ5日連続の試合となり40を超す気温はさすが鉄人にいも限界。21歳のヨバノフスキに最後は力負けした。「体が動いていれば自分のテニスができると確認できた」。欲しいものはと聞かれると「若さ」。昨年末ランキングを146位まで落とし全豪は予選からの出場かと思えた。しかし昨季最後に出場した下部ツアー・ドバイ大会で優勝。99位までランキングを戻して、全豪本戦に滑り込んだ。このガッツ。42歳の快進撃は多くの人に挑戦すればできると言う勇気を与えた。
もう一人の日本の期待。それは錦織圭。23歳はテニスプレーヤーとしてのピークを意味する。いつまでも期待の星ではいけない年齢だ。この全豪には期待するものがあったはず。年末からこの地に入り、ブリスベーンの大会では順調に駒を進めた。世界ランキング3位のマレーと準決勝で対戦。オフに上半身を鍛えサーブ力を上げた錦織は4-1とリード。しかし6ゲーム目に膝を痛め、結局リタイアーした。次戦を休み全豪に出場。今回は組み合わせに恵まれ3回戦までは無難に進撃。しかしロンドン五輪でも撃破したランキング5位のフェレールとの4回戦。万全ではないコンディションでは、カモにする相手でも勝てなかった。勝ったフェレールは「これまでの全豪でもベストの試合。どんなショットも打てる錦織に勝つのは非常に、非常に難しいからだ」と五輪雪辱を果たし喜んだ。錦織には怪我が付きもの。ここは次のメジャー、5月の全仏に向けてしっかりと体調を整えることだ。今年はトップ10入りと言うが、トップを目指す残された時間は少ない。
対照的なのが森田あゆみ。去年は肩や腰の怪我で満足なシーズンではなかったが、オフにリハビリと筋肉強化に取り組み3回戦進出。3回戦はセレナ・ウイリアムスに敗れたが、セレナからも上達ぶりを認められた。今季は楽しみ。土居美咲、添田豪、伊藤竜馬も2回戦進出。6人そろう快挙。日本勢久々の活躍ぶりは今季の楽しみが増える。
[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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