ビール系飲料は戦国時代と言われる。4年前にキリンがアルコールゼロのキリンフリーを発売。運転時に飲めるビールテーストとして売れた。このビール系飲料は酒税がかからないので、1缶売れればビール1ケース分の収益が得られる優れもの。サントリーがこれに糖質ゼロ、カロリーゼロの3ゼロでオールフリーを発売。女性層に受けあっという間に首位に。そして今年ビールの王者アサヒがドライゼロを発売。すっきりした味が受けて500万ケースを見込むと急増中だ。そのドライゼロのCMに起用されたのが石川遼。週末の太平洋マスターズでは、好調ぶりもあってか石川のCMがやたら目に付いた。
最終日-11で首位スタートの石川。スコアを4つ伸ばし68。通算-15で2年ぶりの優勝を手にした。バックナインから連続3バーディ。-16とし2位に4打差。しかし次の13番で3パットでボギー。優勝の重圧がジワリ。15番バーディで再び-16。2位松村道央とは4打差。誰もが石川の楽勝を信じた。しかしそこから事件が起きた。16番でボギー。3打差。17番。昨年ホールインワンしたパー3で6mに乗せるがそこから3パット。村松はバーディ。一挙に1打差に。18番第2打地点はほぼ同じ。先に打った村松の球は右へ。しかしキックが良くグリーンに2オン。石川はピンをデッドに狙う。ボールはグリーンと池の間に。あわや…と石川の顔はゆがむ。しかしボールはエッジに落ちグリーンに向かって跳ねた。これで優勝確実と思えた。村松の13mのイーグルパットはカップに向かう。わずかボールひとつ外れ、石川を逆転できなかった。石川、今度は慎重にカップ10cmに寄せて優勝パットを沈めた。「あんなに難しいパットはなかった」と10cmパットを振り返る。2年間の優勝のブランク重圧。ほろニガ勝利だった。
「2年間で別人になってしまった」と言う石川。10代で9勝。11年は優勝争いに絡むが優勝できなかった。今季はそれすらも減り、15、6位をさまよう。デビュー当時はコースの攻め方が通り一遍であった。それが海外遠征を重ねるうちに、間近で見る世界のプロのさまざまな技に接する。世界の舞台ではショットの多様性を痛感し、試行錯誤を重ねるうちに大きな悩みに落ち込んだ。1日10時間練習などと取り組んだが、本当に練習してもうまくなるのかとの自問自答。しかしこの間にストレート一本からドロー、フェード、高低差のある球と10種類の球筋を打ち分ける術を身につけた。今回はその進化の一端を覗かせてくれたのだろう。
翌日うれしい知らせが舞い込んだ。米男子ツアーは11日に今季全日程が終了。賞金ランクで石川は、87万ドル強で108位相当。上位125選手に入り、米ツアーシード権を獲得した。来季より米国ツアー本格挑戦を目指していたがこれで第1関門は突破した。しかしよりハイレベルな戦いで、メジャーを狙うには米国の実績のあるコーチやトレーナーなどによるチーム石川をつくるべきだろう。それには父親から自立し、力のあるマネージメント会社との契約が欠かせないだろう。かっては3Rといわれた石川だが、その1人ローリー・マキロイは米国・欧州ツアーの両賞金王になった。新天地で一泡ふかすには、その地にあった新しい発想が必要だ。テレビ観戦でおいしい喉越しを味わうためにも、新生遼を見せてほしい。
[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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