自身がニュースサイトを運営していて、このようなことを思うのもなんだが、ニュース独特の言い回しで、以前から気になっているものがあった。
「警察では○○とみて捜査している」
気になるのは「みて」の部分である。
この場合の「みて」は「予想して」という意味で使われる言葉であると思う。
「××市の山中から、粘着テープで両手両足を縛られたうえ、包丁のような刃物でメッタ刺しにされた男性の死体が発見された。警察では殺人・死体遺棄事件とみて、捜査している」
『当たり前だろうが。この状況、誰だってそう思うわ。誰がどう考えても殺人・死体遺棄だろう。まさかこの状況で自殺の可能性も視野に入れているわけじゃないだろう』と、私はいつも思っていた。
事件の捜査・報道は常にあらゆる可能性を考慮して行う必要がある。
しかし、あまりにも確実な状況でありながら「予測する」という意味の言葉を使うのに、どこか違和感があったのである。
そこで、三省堂『大辞林』で「みる」を調べてみた。十数年間も違和感を覚えてきたことが、今回ようやく解決される。
辞書を本棚にとりにいってから解決まで、正味5分であった。最初から辞書を引けばよかったと反省している。
さて「みる」には「予想する」「予測する」という意味ももちろんあるのだが、「判断する」という意味も持っているそうだ。
なるほど。「警察では殺人・死体遺棄事件と判断し、捜査している」と「みて」を「判断し」に置き換えると、実にしっくりくるではないか。
よし、納得がいった…。さあ、寝よう。いや待て。「警察では…」の「では」ってなんだ。
「では」ということは、違う判断をしている誰かがどこかにいるというニュアンスになってはいまいか。確かに、ここも違和感を与える言い回しに含まれている。
また疑問にぶつかってしまった。考えること数十分、ようやく自分なりに納得のいく答えが出た。
「警察では」の「では」は「捜査している」にかかっているのだ。通常、警察以外は捜査をしないので、この場合の「では」の用法としては正解であろう。
ようやく、終わった…。もう、ニュースでこの言い回しを目にすることがあっても、私は違和感を覚えることはないだろう。
[編集後記~Newsスナック/NewsCafe編集長 長江勝尚]
《NewsCafeコラム》
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