アース・モンダミンカップ最終日。首位に1打差で迎えた18番。服部真夕は、2打目をカップ7mにつける。首位の有村智恵はすでに-14でフィニッシュ。下りのスライスラインを慎重に読む服部。このパットを入れればイーグル。-15で逆転優勝となる。やや強めにカップに向かう運命のパット。そして吸い込まれるようにカップイン!普段はあまり表情を出さない服部だが、右手でガッツポーズを2度、3度。劇的大逆転優勝となった。
▼今季新設されたアース・モンダミンカップ。女子のマスターズを目指す。賞金は1億円。これはメジャーを除けばサントリーレディースに並ぶ高額賞金大会。副賞も真赤なポルシェ・ニューボクスター。さらにこの会社はオーガスタのマスターズに23年間に亘りお客を送り込んでいるだけに、そこでの運営を参考にしている。絶好のビューポイントに座席専用エリアを設けたり、各所にペアリングBOXを設置。コースは安田幸吉が設計した名門カメリアヒルズだが、大会用にコースセッティングした。6番パー4は436Y。距離のある非常にタフなこのホールに。最終18番パー5は通常523Yを485Yと短めにセット。イーグルもボギーもあるホールに仕立てた。そしてその恩恵に浴したのが服部。18番を迎え首位に1打差。第1打はフェアウエーに。残り234Y。グリーン手前には大きなバンカーが。「行くしか無い」と5番ウッドのショットは綺麗な放物線を描きピン横7mに。大逆転のチャンスとなった。
▼前回優勝から、この大会まで最終日、最終組を6回経験。一番優勝に近いところにいながら、逃している。特に今季第4戦ヤマハレディースでは、2位に3打差だったが、2打差の2位タイ。先々週の第14戦サントリーレディースでは2位に5打差。しかし韓国のアマチュア、キム ヒョージュに6打差つけられての3位。最終日だけで11打差開く惨敗だった。今回は強敵アンソンジュと首位タイでのスタート。前半は-2。後半10番、14番とボギー。優勝が遠のく。しかしアンソンジュが短いパットをはずし首位を陥落。首位有村とは2打差に。運命は17番の第3打だった。共にほぼ同じ位置で8mのバーディパットを残す。有村はボール1つプロサイド。服部はそれを沈め、有村に1打差となる。迫られた有村は18番で短いバーディパットもはずす。そして服部は、2パットでもプレーオフと強気に臨み、栄光を手中にするカップインとなった。最後の場面で岡本綾子師匠からの「最終日は伸び伸びやって来なさい」のアドバイスが効いたのだろうか。
▼5月の第9戦ワールドレディースから7戦連続で優勝は韓国・中国の選手に制圧された。ワースト記録を更新中。しかも今季15戦のうち、日本人選手の優勝は6戦だけ。日本人女子プロのレベルの低さを見せ付けられるかの様相だった。そこに先週、最終日にまさに劇的な逆転勝利を果たした服部真夕。日本女子プロ界のジャンヌダルクとなった。テレビ解説の樋口久子前会長も感激でか、心なしか声が震えていた。「トッププレーヤー中で競り勝てたのは、一歩次のステージに上がれたと思う」と言う服部。昨年のパーオン率、パーセーブ率は女子プロNO.1。飛距離も出て、安定感のある選手だ。これまでは勝負弱かったが、この劇的フィナーレで一皮向けただろうか。今後の活躍に大いに注目したい。
[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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