結局、判決は無期懲役。
裁判員は、判決後に東京・霞ヶ関の司法記者クラブで行われた会見で、初の死刑求刑で「プレッシャー」や「重圧」を口にしました。
一方、被害者遺族側は検察に控訴するように願ったが、結局、検察側は控訴を断念したのです。
公判の途中で、殺害された祖母の妹が「人殺し」と泣き叫び、法廷を退出した姿を目撃していた私としては複雑な心境でした。
2011年はどんな裁判が注目されるでしょうか?
有名事件では、前回のコラムで取り上げた「秋葉原無差別殺傷事件」の判決があります。
婚活に絡んだ「不審死事件」が、首都圏と島根で発覚しました。
特に、首都圏の事件では証拠が不足しているために、立証が難しいとされています。
ただ、その背景には恋愛の困難さや結婚の難しさが浮き彫りになった年でもあります。
出会い系サイトでは若者だけでなく、生涯未婚率(50歳で結婚経験ない人の割合)が高まる中で、中高年の利用が多くなっている現状もあります。
結婚できない男性たちの焦りや「生きづらさ」が招いた事件とも言えなくもありません。
10年9月には「出会いカフェ」利用で初の殺人事件も起きました。
匿名であるはずの出会いカフェなのに、店舗と自宅が近い場所にあり、殺害現場となったホテルも近距離にあります。
場所的・距離的な不思議さもあります。
また、被害女性について、どんな見方がされるのかも私は気になっています。
こうした事件があると、「そんな店に行くのが悪い」といったような意見もあることでしょう。
出会い系サイトでの殺人事件が2000年に京都で起きます。
判決によると、援助交際の金銭の未払いによるトラブルがきっかけでした。
今回の出会いカフェでの殺人も同じで、被害者が援助交際をしようとしていたかどうかで、量刑が変わるかが気になります。
援助交際について、私はフリーライターになる前の新聞記者時代から取材しています。
その経験から言えるのは、生きづらさとの親和性がある場合もあるのです。
被害女性も生きづらさを抱えていた可能性もあります。
もちろん、裁判では真実が明らかになるとは限りません。しかし当事者の生の声を聞く機会です。
こうした裁判に注目することで、当事者たちが、事件に吸い寄せられたことの一端を垣間見ることができるでしょう。
そして、「生きづらさ」や「居場所のなさ」を感じている人たちが、事件を回避するヒントが見つけられれば幸いだと思います。
(終わり)
《NewsCafeコラム》
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